そして読者の皆さまがご存じのように、2014年10月、「2014年のノーベル物理学賞」は「明るく高エネルギー効率な白色光源を実現した青色LEDの発明」の功績によって赤崎氏、天野氏、中村氏の3名に決まります。すでに高輝度LEDは社会インフラの1つとなっていました。
「明るくてエネルギー効率の高い白色光源」、すなわち照明器具の世界に青色LEDが多大な貢献をもたらしたことが受賞理由として記述されたことは重要です。青色あるいは紫色のLEDと蛍光体を組み合わせた高輝度白色LEDは1996年に日亜化学が、2001年に豊田合成が開発し、商品化しています。高輝度白色LEDは当初、価格が高い、演色性が悪い、などの欠点がありました。しかし、その後の改良と量産規模の拡大によって価格は下がり、演色性は向上しています。現在では白熱電球や蛍光灯などの白色・暖色光源の大半が、白色・暖色LEDに置き換わっています。
白熱電球については日本政府による省エネ機器の推奨や販売数量の減少による採算性の悪化やなどにより、国内の大手照明器具メーカーは2010〜2012年に生産を終了しました。なお中小の照明器具メーカーの一部は、白熱電球の製造を継続しています。
一般照明用の蛍光灯は「水銀に関する水俣条約 第5回締約国会議」の合意によって2027年末をもって製造と輸出入が禁止されます。日本では2026年1月1日以降、段階的に製造と輸出が禁止されていきます。なお現在使用中の蛍光灯と在庫品については規制の対象外とされております。
電気エネルギーによる照明の歴史を切り開いた「電球」が実用的な寿命に達したのが1879年(米国、翌年に製品の製造開始)、「蛍光灯」の販売が始まったのが58年後の1937年(米国)のことです。それから59年後の1996年に白色LEDが日本で開発されました。いずれも60年近くの年月を経て登場しています。
単なる「語呂合わせ」ですが、次の「照明(次世代照明)」が登場するのは「59年後の2055年」ということになるかもしれません。確実なのは、「次世代照明」は白色LEDと比べてさまざまな点で優れていることです。白色LEDよりも電力効率が高く、演色性に優れ、コストが低い。これらの特長を兼ね備える、想像を超えた技術が出現するかもしれません。
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