東京科学大学総合研究院フロンティア材料研究所の研究チームは、乾電池1本分の電圧(1.5V)で光る深青色有機ELの開発に成功した。次世代ディスプレイ規格に近い青色発光を低電圧で行うことが可能となる。
東京科学大学総合研究院フロンティア材料研究所の伊澤誠一郎准教授らによる研究チームは2025年10月、乾電池1本分の電圧(1.5V)で光る深青色有機ELの開発に成功したと発表した。次世代ディスプレイ規格に近い青色発光を低電圧で行うことが可能となる。
研究チームはこれまで、2種類の有機分子の界面におけるアップコンバージョン過程を利用したアップコンバージョン有機EL(UC-OLED)を開発し、1.5V以下で青色発光を実現してきた。ただ、最終的に光る蛍光ドーパントとして用いる材料が「ペリレン誘導体」に限られていたため、発光するのは「水色」であった。
そこで研究チームは、UC-OLEDの発光メカニズムに基づき、さまざまな材料を発光層に加えて評価した。具体的には、三重項−三重項消滅(TTA)を起こす発光材料として、青色発光体の「アントラセン誘導体」を、アントラセン誘導体と界面を形成する電子輸送材料には「ナフタレンジイミド誘電体」をそれぞれ用いた。そして発光層にさまざまな蛍光ドーパントを加え、UC-OLEDの駆動特性に与える影響を調べた。
実験ではまず、多重共鳴効果を利用した「DABNA誘導体」を発光層中に添加した。この結果、ペリレン誘導体を用いた場合に比べUC-OLEDの抵抗が増え、発光が始まる電圧は2.5V以上となった。
そこで、狭線な青色発光が得られHOMO順位も深い「QAO誘電体」を新たに合成した。QAO誘電体を発光層中に添加したUC-OLEDは、発光が1.5V付近から立ち上げることを確認した。発光スペクトルは半値幅が20〜30nmで、極めて狭線な青色発光が得られたという。
中でも、「tB-CZ2CO」をUC-OLEDの蛍光ドーパントに用いると、発光ピーク波長が447nm、半値幅が20nmという深青色発光が得られることを確認した。この発光は国際照明委員会(CIE)1931 RGB色空間座標が(0.148、0.07)で、次世代のディスプレイ規格である「BT.2020」の理想的な青色に近い値だという。
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