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いよいよ来るか? 半導体設計/検証に「エージェントAI」シリーズAで2100万ドルを調達(1/2 ページ)

エージェント型AIを手掛ける米新興のChipAgentsが、シリーズA投資ラウンドで2100万米ドルを調達した。エージェントAIを、半導体設計/検証に浸透させるべく取り組む。

» 2025年11月12日 13時30分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

 エージェント型AIを手掛けるスタートアップであるChipAgentsは、EDAおよびハードウェア設計検証用AIエージェントの構築に向けて、シリーズAの投資ラウンドで2100万米ドルを調達した。同社はエージェント型AIを活用して、言語ベースのコマンドを通じてRTLコードの生成、テストベンチの作成、デバッグ、検証を高速化する。

 米国カリフォルニア州を拠点とする同社は、EDAツール向けエージェントインタフェースを開発する唯一の企業ではないが、シリーズAの資金調達を達成した初のスタートアップである。ChipAgentsの創業者でCEOを務めるWilliam Wang氏は米国EE Timesに対し、「調達資金は、研究開発エンジニアや営業担当者の雇用と、多額の内部コンピューティングコストに充てる予定だ」と語った。

William Wang氏 出所:ChipAgents William Wang氏 出所:ChipAgents

 Wang氏は、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校で機械知能の教授を務める。同氏によると、ChipAgentsの設立は2024年6月だが、自身のAI経験は2011年にさかのぼり、推論エージェントの研究を開始したのは2017年だったという。

 「ChipAgentsは約1年前、つまり大手EDAベンダー各社が独自のエージェント型AIプログラムを公表し始めるずっと前から製品を市場投入している」とWang氏は述べている。「既に主要半導体企業のほとんどに相当数の導入実績がある。これは、顧客と協力してソリューションの限界を押し広げられることを意味している。初期製品は現在、50社に導入されている」

 Wang氏は「2025年は非常にエキサイティングな年だった。実際のプロジェクトで開発の高速化をすぐに実感でき、最新チップを使った実プロジェクトで開発時間が約80%短縮された。これまでのところ、顧客の満足度は非常に高い」と述べている。

言語モデルはチップ設計には不十分

 Wang氏は「今日のチップのサイズと複雑さ、失敗する可能性があり注意を必要とするテストケースの量を考えると、言語モデルはチップ設計のような複雑な技術タスクには不十分だ」と述べる。

 「シミュレーションを実行してテストケースが失敗した場合、まずログファイルを確認し、次に設計仕様をチェックし、波形を見て、その後設計自体を調べて問題箇所を特定する必要がある。ChipAgentsは、実際にアクションを起こし、コンテキストを把握し、次のステップを見極めようとするエンジニアをインテリジェントに支援して、設計と検証における最も困難なタスクの一部を自動化する、いわばエンジニアのような存在だ」(Wang氏)

 「特に半導体の設計検証は、納期の短縮やリソースの制約、要件の変化により危機的状況にある」とWang氏は付け加えた。

 「多くの検証プロセスは数カ月かかり、その間に設計が実際に変更される可能性がある。その場合は、カバレッジモデルを再スタートしなければならない。これらのプロセスの多くは並行して実行されるが、一部はサイクルで実行するものもあり、人間にとって繰り返し作業は特に苦痛である。こうした面倒なサイクルをAIに任せるのは素晴らしいアイデアだ」(Wang氏)

 Wang氏は、「ChipAgentsはタスクに応じて、単一のエージェントを使用する場合もあれば、完全なエージェント型ワークフローを使用する場合もある。これは大きな問題に人間のエンジニアチームを割り当てるのと似ている。比較的単純なタスク(2000ページのPCIe仕様書を読み込んでテスト計画を生成するなど)は単一エージェントで対応できる。より複雑なタスク(大規模なコードベースのデバッグ/根本原因分析)には複数のエージェントが必要だ」と説明している。

 ChipAgentsはCadenceやSynopsys、SiemensのEDAツールを置き換えることを目指してはいない。同社のエージェントは1つ上位レベルに位置し、これらのツールを使用して、エンジニアが行うのと同じようにタスクを完了する。唯一の違いは、処理速度が高速であることだ。「EDAツールベンダー各社が独自のエージェント型ツールインタフェースの開発に取り組む中においても、当社はこれまで主要EDAツールベンダーと良好な関係を築いている」とWang氏は述べている。

 Wang氏は「AI主導のEDA市場全体のTAM(獲得可能な最大市場)を開拓するには、EDA大手3社と協力する必要がある。この関係は健全かつ補完的であり、市場を拡大するだろう」と述べ、「ソフトウェア向けのAIコード生成は既に広く受け入れられているツールだが、ハードウェアは後れを取っている」と指摘した。

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