ChipAgentsは、エージェントをトレーニングするデータをどこから入手しているのだろうか。
Wang氏は「データは微調整用データと評価用データの両方の面で非常に複雑だ」と述べている。
ChipAgentsの専任研究チームとデータチームは、ライセンス制約の緩いオープンソースデータや合成データを利用できるが、データの購入も行って、社内の専門家がデータのアノテーションを支援している。
Wang氏は「顧客の既存のデータの微調整に多くの関心が寄せられており、各企業向けにカスタマイズされたエージェントが実現するだろう(企業の個人データは、他の顧客が使用するエージェントのトレーニングには使用されない)。顧客のプロンプトやクエリ、利用データも非公開状態が維持される」と述べている。
Wang氏は「ChipAgentsの50社の顧客には、多くの大手半導体企業だけでなく、自動車やその他のシステム企業、チップ設計会社、中堅企業やスタートアップ企業、IP設計企業など、従来とは異なる企業も含まれている。これらの企業の多くは生産ワークフローにChipAgentsを導入しているが、現時点ではいずれの企業もChipAgents製品を用いたテープアウトには至っていない」と述べている。
顧客がエージェント型AIを導入する動機には、十分な技術スタッフを雇用することが難しく、より早いテープアウト達成への圧力が高まっていることなどがある。そのため、特に煩雑な作業から解放し、イノベーションに注力できるようにすることによって、既存スタッフのスキルを最大限に引き出すことが重要である。
Wang氏が述べているように、多くの場合、設計者やアーキテクトはエージェントと対話する中で、質問したり、アイデアをブレインストーミングしたり、例えばエージェントのデータシートを実際に見て、実装に最適なアルゴリズムを検討したりすることを好む。
エージェントは、人間の設計者は巨大なSoC(System on Chip)のコンテキストにおいて、「設計上の選択肢」と「消費電力・性能・面積」とのバランスを検討しやすくする。しかし「業界が、RTLからテープアウトまでのエンドツーエンドプロセスを完結できるエージェントを実現するには、まだ数年かかる」とWang氏は述べている。
「設計プロセスにおいて人間の意図は依然として重要だ。開発すべきチップは厳密にどんなものなのか、追加したい機能は何かといったことは、顧客の要望によって決まるため、依然として人間が検討しなければならない。だが、ブレインストーミングによってより適したアルゴリズムを選択したり、レガシーコードの理解を助けたり、コードのリファクタリングやサブシステムの実装に関するアイデアの立案を支援したりすることにおいては、現在のAIは非常に有能だ」(Wang氏)
ChipAgentsは、EDAツール分野を自社技術の将来バージョンのための機会と捉えている。
エージェントが特に関連する新しい分野の1つは、Wang氏が「検証の検証」と呼ぶ、人間の設計検証エンジニアの作業が正確かつ網羅的であるかどうかのチェックであり、特にコーナーケースの定義に役立つ。
「これはほんの一例だが、AIは既存のEDAツールでは実現できない、切望される多くの新たなユースケースを可能にしていると考えている」と同氏は述べている。
Wang氏は「EDA業界が使用しているアルゴリズムの中には数十年前のものもあり、一部のツールは数十億ゲートへの拡張に苦戦している」と述べている。
同氏は「個人的には、エージェント型AIや基礎的なAIイノベーションが既存のEDAアルゴリズムやEDAツールの刷新にどう貢献できるかを検討する余地があると考えている。可能性はあるが、非常に慎重に、何をしているのかを理解する必要がある。いくつかの興味深いユースケースも見てきたが、この分野はまだ大きく開かれている」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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