ニデックはこの日、不適切会計疑惑に関するこれまでの経緯と取り組みについて説明した。下図はこれまでの経緯を示した表だ。
同社はさらに、今回の決算短信および半期報告書の提出と合わせて、東証に今後の改善計画の策定方針を提出したとも公表。岸田氏は「これら多くの事象を前に、会社として何を正しくやっていくかを考えている。第三者委員会の調査と並行しながら、われわれ自身で進めるべきことにも取り組んでいる」と説明した。
これまでに実施した改善策としては、まず、コンプライアンス最優先の意識や、現在の企業風土の改革だ。取締役会からグループ内の全員に対して明確なメッセージの発信および、全世界の幹部社員に対するメッセージ発信の頻度も上げていて、岸田氏は「これで足りているとは決して考えていない。1つ1つ今後の第三者委員会の対応も踏まえて、取るべき対応についてあらゆる手を尽くしたい」とした。また、法務コンプライアンス部門の機能/権限強化として、新たに社内弁護士を配置し、内部通報対応および調査体制の強化に取り組んでいるという。
組織風土の改革について岸田氏は「現在発表している5件のコンプライアンス案件について解明していく中で、この背景の大きな理由として、われわれ全体を取り巻く組織風土の改革が必要という認識に立っている」と言及した。
そのうえで「われわれが現在認識しているのは、どうしても短期的な収益を重視しすぎ、そこに合わせたプロセスが、かなり大きく運営の中身を占めているということだ。そこから改めていかなければならない。ニデックといえば『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』という精神があるが、そこに加えて『すぐやる、必ずやる、できるまでやる、必ず正しくやる』という新たな倫理観を付加していくことが、今の企業風土には重要だという仮定の上で改革に取り組み、その都度、ブラッシュアップしていきたい」(岸田氏)とした。
このほか、組織/体制の強化としてグローバルガバナンス体制を強化。最高法務責任者(CLO)の他、北米拠点にも法務コンプライアンス専門家を配置。岸田氏は「今後、事業と地域や機能のバランスが正しくけん制しあうためにも、われわれの体制として非常に重要な一歩と考えている」と説明した。
またニデックは2025年10月30日、ガバナンス強化に向けた組織「ニデック再生委員会」を設置している。岸田氏は「まずは企業風土や組織風土の改革。そして、もうけた人だけが評価されるような現状の短期的な人事制度を、長期的かつ健全な運営に貢献しているかを評価する人事制度への改革および、それに適合した人材の育成。さらに今回、さまざまな問題があるような会計上の問題を乗り越えていくための、恣意性が介入しないプロセス改革や規定の見直し。そしてITを含めた仕組みの改革などに取り組んでいく」と語った。
この日提出した改善計画の策定方針は、こうした組織風土の改革や人事制度の改革、恣意性の介入しない会計制度やプロセス改革、ITを含めた仕組みの改革が主な内容だという。岸田氏は「引き続き、第三者委員会の調査に今後も全面的に協力し、徹底的な調査と原因究明を実行していく。今後出てくる第三者委員会の調査報告を正面から受け止め、実効性のある再発防止策の策定に取り組む」と述べた。
なお、改善計画の提出は2026年1月下旬を計画。その後、2026年10月下旬には内部管理体制確認書等の提出を経て、指定銘柄の解除審査を目指すとしている。
今回の会見では岸田氏に対し、一連の問題に関する経営責任についての質問が出たが、岸田氏は「私自身は最高経営責任者であり、あらゆる意味での経営責任は取っていく覚悟を持っている」と言及。そのうえで「再生委員会も含め、この企業をより良い企業、グローバルに本当に輝ける企業に再生していくということが私自身が果たすべき最大のミッションと心得ているので、それに対して取り組んでいく。それ以外の経営責任については、第三者委員会の調査結果を待ち、適切に判断する」とした。また、岸田氏や永守氏が一連の不適切会計疑惑を把握した時期や、両社が不正を指示した事実の有無についての質問には「それを含めた調査が現在進行中のため、私からコメントをすることは差し控える」と述べるに留めた。
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