メディア向けのQ&Aセッションでは、両CEOに対し「今回の投資は、GPUを追加で調達するために使うのか」とする質問が上がった。それに対してGhazi氏は「Synopsysは既に、NVIDIAのデータセンター向け顧客となっている。20億米ドルの投資資金をNVIDIA製GPUの調達に使うつもりも義務もない。ハードウェアの調達は、これまで長年にわたって行ってきたように、通常の事業の範囲で行っていく」と述べている。
Huang氏は、米国EE Timesからの質問に対し「これは素晴らしい投資だ。われわれは、EDAやCAE、コンピュータ支援による創薬など、基本的に研究開発のあらゆる側面において、製品設計や製品イノベーション、製品製造などに関与するあらゆる人々に変革をもたらそうとしている。そのために、市場機会をこうして大きく拡大していくのだ。Synopsysは今回の提携と合わせて、NVIDIAをベースとした技術構築に大きくコミットしていく。これは、パートナーシップに対するわれわれのコミットメントを示す、素晴らしい方法だ」と付け加えた。
Ghazi氏もこれに同意し「Synopsysの視点から見ると、われわれが今回の投資を受けたのは、選択肢を広げ、加速していくためだ。これまで自力でやってきたことは、この先も自力で進められる。われわれはこの7年間、独自に取り組んできた。このため、動機を探していたのではない。市場がそこへ進んでいくことを知っていたのだ」と付け加えた。
Ghazi氏は「基本的に、ポートフォリオの次のフェーズでは、AIがエンジニアリングワークフローそのものをどのように変化させていくのか、ツールがシステム全体をどのように仮想化できるのかという点を注視していく。シミュレーションの実行方法や、設計のさまざまなボトルネックの他、それを加速するための方法などを根本から変えていく上で、非常に多くのチャンスが広がっている。このため、われわれにとって重要なのは、加速することであり、確実に起こると信じているチャンスをつかみ取ることだ」と述べる。
Ghazi氏は、今回の発表に向けて用意したコメントの中で「次世代インテリジェントシステム開発は、複雑でありコストもかかるため、エレクトロニクスと物理学とをより深く統合し、AI能力やコンピュート機能によって加速された、エンジニアリングソリューションが必要である。AI駆動型の総合的なシステム設計ソリューションを提供できる優れた位置付けにあるのは、SynopsysとNVIDIAの2社だけだ。われわれは共に、エンジニアリングを再設計し、全てのイノベーターがより効率的にイノベーションを実現できるようサポートしていく」と述べる。
Synopsysの最高製品管理責任者Ravi Subramanian氏が、EE Timesのブリーフィングで語ったところによると、今回のパートナーシップは両社のエンジニアリングチーム間のより緊密なコラボレーションに関わるものだ。「われわれはエンジニアリング開発を加速し、エンジニアリングワークフローを変革し、さまざまな業界にデジタルツインをもたらしたいと考えている。2026年には約20のアプリケーションでGPUアクセラレーションを実現するという明確なコミットメントがある」(同氏)
「Ansysの買収はSynopsysの歴史において重要な意味を持つ。Synopsysには約2000の顧客がいて、Ansysは1万8000の顧客ベースを持っている」とSubramanian氏は付け加えた。これにより、当社のソリューションは多くの非半導体顧客に開放される」(Subramanian氏)
両社はまた、今回の提携が排他的なものではないことも強調した。NVIDIAとSynopsysは今後も、エンジニアリングと設計の分野で成長機会を創出するため、より広範な半導体およびEDAエコシステムと提携していく。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
TSMCが先端ノードのウエハー価格を大幅値上げへ
SCREENがニコンのウエハー接合技術を譲受 先端パッケージ領域の成長図る
LPDDRが足りない AIブームで価格高騰
AI半導体市場の「アキレス腱」 成長を脅かす電力不足
SynopsysのAnsys買収がようやく完了、統合後の戦略とはCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング