京都大学と自然科学研究機構(NINS)、神戸大学らの研究グループは、原子1層の半導体「単層二硫化タングステン(WS2)」にシリコンナノ球を組み合わせることで、第二高調波発生(SHG)の信号を最大で40倍以上に増強しながら、約80%という高い円偏光度を保つことに成功した。
京都大学と自然科学研究機構(NINS)、神戸大学らの研究グループは2026年3月、原子1層の半導体「単層二硫化タングステン(WS2)」にシリコンナノ球を組み合わせることで、第二高調波発生(SHG)の信号を最大で40倍以上に増強しながら、約80%という高い円偏光度を保つことに成功したと発表した。次世代光情報処理デバイスへの応用が期待される。
光の周波数を2倍にするSHG技術は、レーザー技術や光通信、量子情報処理などで広く利用されている。特に、円偏光の状態を厳密に保持しながら光信号を増強させることが重要といわれている。これらを実現するための材料として単層遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)が注目されている。ただ、SHGの変換効率が極めて低く、これを従来方法で増強すれば「偏光が壊れる」などの課題があった。
研究グループは今回、新たな増強手段としてシリコンナノ球に着目した。光の波長とほぼ同サイズのナノ球にすると、「Mie共鳴」と呼ばれる強い光の閉じ込めが生じる。しかも、粒子の直径を変えれば共鳴波長を制御できるという。
実験では、直径が200nmと241nmという2つのシリコンナノ球を用意、それぞれ単層WS2上に配置し、SHGの増強と偏光保持について調べた。直線偏光でSHG測定を行ったところ、200nmのシリコンナノ球では約5倍、241nmのシリコンナノ球では40倍を超える増強を観測できた。この増強は、シリコンナノ球のMie共鳴が入射光やSHG光と結合することで生じるという。
次に円偏光を用いた測定を行い、バレー偏光の保持を確認した。シリコンナノ球を設置していない単層WS2では、DOCP(円偏光度)が「ほぼ−1」であり、完全な偏光保持状態であることが分かった。シリコンナノ球を組み合わせた場合でも、840〜950nmの波長域では、約80%のDOCPを維持しつつ、SHG信号が増強されることを確認した。ナノ球の直径を変更すれば、増強度と偏光保持のバランスを制御できるという。
研究グループは数値シミュレーションの結果から、シリコンナノ球の電気モードと磁気モードの振幅バランスが、偏光保持のポイントになることを明らかにした。Mie共鳴から離れた波長域では、散乱が弱く偏光が保たれる。共鳴に近づくと散乱による増強は大きくなるが、モード間のバランスが崩れて偏光は低下することが分かった。
今回の研究成果は、京都大学エネルギー理工学研究所の松田一成教授、NINS分子科学研究所の篠北啓介准教授(兼総合研究大学院大学准教授)、呉柊斗大学院生(総合研究大学院大学)、神戸大学大学院工学研究科の藤井稔教授、杉本泰准教授、モジタバ・カリミハビル研究員らによるものである。
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