三菱電機と京都大学は共同で、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)に対する疲労試験の方法を確立するとともに、HOPGの自己復元特性を初めて確認した。HOPGを素材とするMEMSの長寿命化を実現するとともに、MEMSを搭載するスマートフォンや車載システムの信頼性向上が可能となる。
三菱電機は2026年1月、京都大学と共同で高配向性熱分解グラファイト(HOPG)に対する疲労試験の方法を確立するとともに、HOPGの自己復元特性を初めて確認したと発表した。HOPGを素材とするMEMSの長寿命化を実現するとともに、MEMSを搭載するスマートフォンや車載システムの信頼性向上が可能になる。
スマートフォンや車載システムには、MEMS加工技術を用いた加速度センサーや圧力センサーなどが搭載されている。これらの応用機器では長期間の振動や衝撃に耐えられる高い耐久性や、さらなる軽量化が求められる。こうした背景から、MEMSでは軽量で高い強度を持つファンデルワールス(vdW)積層材料の適用などが検討されている。ただ、vdW積層材料を用いたデバイスに、繰り返し負荷が加わった場合の疲労特性などを評価する試験方法は、これまで確立されていなかったという。
研究グループは今回、vdW積層材料の一種であるHOPGを用いマイクロレベルの試験片を作製することに成功した。そして、この試験片に繰り返し曲げ負荷を加えてせん断変形させる、新たな試験方法を確立した。
実験では、一方向のみに変形させる「片振り試験」と、両方向に変形させる「両振り試験」を行った。片振り試験では、1万回の負荷を与えた後に38日間放置。次に負荷を少し大きくして3000回与えた後に30分間放置、その後も負荷を大きくして3000回の負荷を与えた。両振り試験では、1000回の負荷を与えて7日間放置。その後負荷を大きくして1000回の負荷を与えた。
いずれの試験でも、与える負荷の回数が増えると変形抵抗が低下した。ところが、この試験片を放置すると、変形抵抗は回復した。具体的には、片振り試験だと1万回で初期の66%に低下するが、38日間放置したところ91%まで回復した。両振り試験では1000回で41%まで試験片は柔らかくなった。これを7日間放置したところ97%まで回復することが分かった。
今回確認できた自己復元特性は、グラファイトのようなvdW積層材料の特殊な構造によるものだという。この構造により、試験片に曲げ負荷を与えても層間すべりを起こし、大きな変形があっても折れて壊れることはなく、変形を柔軟に吸収できるためである。
研究グループは今後、MEMSの振動吸収機構に自己復元特性を応用し、寿命が長く信頼性の高い振動吸収機構を開発していく。また、他のvdW積層材料にも今回の疲労試験方法を適用し、MEMSの長寿命化を実現していく。
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