広島大学と京都大学、理化学研究所、筑波大学および、東レリサーチセンターは、新たに開発した発電材料を用いることで、有機薄膜太陽電池(OPV)で課題となっていた「低電圧損失」と「高効率電荷生成」の両立を実現した。電圧と電流が同時に向上するという現象の起源も突き止めた。
広島大学と京都大学、理化学研究所、筑波大学および、東レリサーチセンターは2026年3月、新たに開発した発電材料を用いることで、有機薄膜太陽電池(OPV)で課題となっていた「低電圧損失」と「高効率電荷生成」の両立を実現したと発表した。電圧と電流が同時に向上するという現象の起源も突き止めた。
OPVは、軽量かつ柔軟性があり塗布プロセスで製造できるため次世代型太陽電池として注目されている。有害物質を含んでいないのも特長である。ただ実用化に向けては、ペロブスカイト太陽電池や無機太陽電池と比べ、「エネルギー変換効率が低い」という課題があった。これを解決するには「電圧」と「電流」におけるトレードオフの関係を解決する必要があるという。
そこで今回は、広島大学が開発したポリマー半導体「PTNT1-F」をp型材料として用いたOPV素子を作製し、その発光特性を調べた。この結果、「電圧および電流がともに向上する」という、これまでのOPV素子では見られなかった現象を観測できた。
こうした現象の起源を突き止めるため、研究グループはさまざまな測定装置を使って素子の解析を行った。京都大学は、OPV素子の発光特性を調べた。この結果、PTNT1-Fを用いた素子は、ベンチマーク材料を用いた素子に比べ、高い発光特性を示した。
例えば、無輻射電荷再結合に起因する実際の電圧損失は0.18Vで、ベンチマーク材料の0.20〜0.23Vに対し、最大30%低減した。電力損失を抑制できたのは、p型とn型材料のエネルギー差(ΔE)縮小が関与しているという。PTNT1-Fは、比較的高い電荷生成効率を有する。このため、ΔEが小さい場合でも効率よく電荷解離が起こっていることが分かった。
次に、PTNT1-Fを用いたOPV素子は、ΔEが小さくてもなぜ効率よく電荷解離が起きるかを調べた。X線回析などにより薄膜構造を解析した。この結果、PTNT1-Fとベンチマーク材料には明確な差はなかった。そこで光電子収量分光測定を行ったところ、PTNT1-Fは分子軌道の状態密度分布が極めて狭いことが判明した。さらに、量子化学計算によって、PTNT1-Fはポリマー主鎖内で有効質量が小さいことも分かった。
つまり、PTNT1-Fでは電荷が分子鎖内で広く非局在化していて、ΔEが小さくても効率よく電荷解離が可能になったとみている。
今回の研究成果は、広島大学大学院先進理工系科学研究科の尾坂格教授、三木江翼助教、駿河翔太氏、京都大学大学院工学研究科の大北英生教授、理化学研究所の但馬敬介チームディレクター、中野恭兵上級研究員、筑波大学数理物質系の石井宏幸教授、東レリサーチセンター形態科学研究部室長の稲元伸博士らによるものである。
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