京都大学はグラーツ工科大学と共同で、有機半導体薄膜の構造を分子レベルで解明することに成功した。特に今回は、これまで曖昧であった単分子膜相の構造を、薄膜相と区別して直接識別できたという。
京都大学化学研究所の塩谷暢貴助教や長谷川健教授の研究グループは2026年1月、グラーツ工科大学のRoland Resel教授やEgbert Zojer教授らと共同で、有機半導体薄膜の構造を分子レベルで解明することに成功したと発表した。特に今回は、これまで曖昧だった単分子膜相の構造を、薄膜相と区別して直接識別できたという。
研究グループは今回、代表的な有機半導体であるジナフトチエノチオフェン(DNTT)に着目した。この有機材料に対し、「高分解赤外分光法」と「微小角入射X線回析」「量子化学計算」を組み合わせた独自の手法を用い、「単分子膜相」「薄膜相」および、「バルク相」という3種類の結晶構造を段階的に明らかにした。
具体的には、赤外分光法で各結晶相に特有の吸収バンドを識別。次にX線回析を用いてこれら結晶相の格子定数を確定。実験で得られたこれらの情報を基に、各結晶相の構造モデルを量子化学計算により決定した。
これらの情報を統合解析したところ、DNTT薄膜には膜厚によって3つの異なる結晶相が現れることを確認した。それは、単結晶や多層膜とは異なる分子配列の「単分子膜相(1層目)」、単分子膜相より移転した中間構造の「薄膜相(数十ナノメートル)」および、単結晶と同じ安定構造の「バルク相(数十ナノメートル以上)」だ。
塩谷氏は「多くの有機半導体材料が薄膜相を有する中、DNTTは多形を持たない薄膜材料として長年認識されていた。本研究成果は、その長年の理解をくつがえし、薄膜相や単分子膜相がDNTTを含む棒状分子に共通の性質であることを強く裏付けるものだ。この成果は、赤外分光法、X線回折、量子化学計算のそれぞれの専門家の知恵が結集したことで成し遂げられている」とコメントしている。
今回の成果は、有機エレクトロニクス分野における薄膜形成の理解を大きく前進させ、センサーやトランジスタなど次世代デバイスの性能向上につながることが期待されるという。また、今後は他の材料系への適用や、界面構造の精密制御技術への展開が見込まれる。
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