能動負荷を使い利得を高めた増幅回路で発生する課題として、応答速度が遅くなることが残っています。この課題への対処方法を紹介しましょう。
応答速度が遅くなるのは、MOSFET(M3)のゲートとドレインの間に寄生する静電容量Cgdが原因です。増幅回路の入力と出力の間にある静電容量なので、ミラー効果によって静電容量が利得倍に増えて、応答速度の低下を引き起こしてしまうのです。
ミラー効果を抑制するために、図1の増幅回路にさらにゲート接地回路を追加しました(図3)。ゲート接地回路は、バイポーラトランジスタのベース接地回路と同じ効果が得られ、応答速度を高められます。(ミラー効果やベース接地回路の動作については、第10回の「エミッタ接地回路のサプリメント 〜 ベース接地回路 〜」を参照して下さい)
図4(a)に、ゲート接地回路を使ったミラー効果対策を施した増幅回路の交流解析の結果を示しました。ゲート接地回路の効果は一目瞭然で、高域遮断周波数がおよそ10MHzから100MHzに向上しました。
また、高域遮断周波数よりも低い周波数帯域で、利得が2dBほど高くなっていることも分かります。これは、M3とM7がカスケード接続されたことで、より出力インピーダンスが高くなり、理想的な電流源に近づいたためです。
図4(b)に過渡解析の結果を示しました。周波数が50MHz、振幅が100mVppの信号を図3の回路に入力したときの出力です。ゲート接地回路を追加した方が、振幅が大きくなっていることを確認できました。
次回は、これまで紹介してきた幾つかの要素回路を組み合わせましょう。バイポーラトラジスタを使って紹介した差動対と、MOSFETの増幅回路を組み合わせた回路を解説する予定です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.