富士電機は、従来必要だった計3つのトランス/コイル部品を1つに減らせるとする、LLC共振コンバータ電源の制御IC「FA5760」の開発を進めている(図3、図4)。
一般に薄型テレビの電源は、PFC(Power Factor Correction)回路やLLC共振電源コンバータ、スタンバイ電源といった複数の回路ブロックで構成している。このような回路構成の場合、PFC回路用のチョークコイルと、LLC共振電源コンバータ用トランス、スタンバイ電源用トランスという合計3つのトランス/コイル部品が必要だった。富士電機が開発中の制御ICを使えば、LLC共振電源コンバータ用トランスだけで従来と同じ電源を実現できるとする。
FA5760の主な特徴は2つある。1つは、「バースト発振」と呼ぶモードを用意することで、従来必要だったスタンバイ電源を不要にしたこと。もう1つは、入力電圧が85〜264Vと広い範囲で、PFC回路無しでも安定動作することである。
出力電力が75Wを超えるような電源には、力率改善のみならず、安定動作のためにコンバータの前段にPFC回路を追加するのが一般的だという。FA5760では、新たな制御手法を導入することで、PFC回路を不要にした。「PFC回路が無くても、幅広い入力電圧範囲に対して『共振はずれ』と呼ぶ現象の発生を抑え、安定動作させることができた」(同社)という。
スタンバイ電源とPFC回路を使わない電源構成を採るため、上で説明した通り、トランス/コイル部品は基本的にLLC共振電源コンバータ用トランスだけでよい。
スタンバイ電源を無くしたことで、待機時の消費電力が減ったことも特徴である。例えば、無負荷の待機時の消費電力は0.1W。出力電力は最大104W。2011年末にサンプル出荷を開始する。量産開始は、2012年前半を予定している。
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