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モバイルとの接続性こそ「スマートテレビ」の条件、HD映像の無線伝送が鍵に無線通信技術 WHDI(2/2 ページ)

» 2011年08月18日 17時55分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]
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「What's next ?」

 ケーブルを使わず、高精細(HD)映像を無線で送る技術そのものは、目新しい技術ではない。2008〜2009年に掛けて、テレビのディスプレイ部とチューナー部を無線で接続し、HD映像を伝送できるデジタルテレビが相次いで製品化された。日本国内では、シャープ、ソニー、パナソニック、日立製作所、三菱電機といった大手の機器メーカー各社がこのような機能を搭載したテレビを発売した。

 しかし、製品化の盛り上がりは、長くは続かなかった。その後、3D映像に対応した3Dテレビ、そしてインターネットサービスとの連携を打ち出したスマートテレビへと、業界の注目を集める話題は移った。

 Nissan-Cohen氏は次のように今の状況を捉える。「今のところ、どの機器メーカーのスマートテレビも、一般消費者に広く受け入れられ、成功を収めたとはいえない。次に考慮すべきことは何か。それは、再度、無線を使った接続性への回帰である。すなわち、さまざまなモバイル機器と手軽に無線で接続できるスマートテレビ、われわれはこれこそが真のテレビだと考える」。

 同氏の主張のよりどころは、2008年当時と現在を比べたときの、モバイル機器を取り巻く状況の変化である。タブレットPCやスマートフォンといったモバイル機器が急速に普及し、身の回りにあふれている。これらのモバイル機器には、HD映像をダウンロードしたり、撮影したりするハードウェアが備わっている。携帯型のゲーム専用機のみならず、スマートフォンでゲームを楽しむという利用シーンも増えた。このような背景から、テレビの大画面のディスプレイにモバイル機器のコンテンツを表示したいというニーズが高まっているというのだ。

Wi-Fiとの共用を視野

 AMIMONが、モバイル機器とテレビを接続する無線通信技術として提案するのは、「WHDI(Wireless Home Digital Interface)」と呼ぶ独自技術である。5GHz帯の40MHz幅を使い、1080p/60HzのHD映像を非圧縮で伝送できると主張する。データ伝送に要するトータルの遅延時間が短いことと、データ伝送のロバスト性が高いことも特徴だという。遅延時間は1msと短いため、遅延に対する要求が厳しいゲーム用途でも、違和感なく使える。伝送距離は30m程度である。

 同社は、2009年にWHDI規格を策定し、2010年には、WHDI規格に対応したベースバンド処理プロセッサの量産を始めた。同社にとって第2世代と位置付ける品種である。これまで、規格も半導体チップも用意されていたものの、規格に準拠したことを認証するコンプライアンステストを開始していなかった。2011年に入ってようやく、ATC(Authorized Test Center)を開設し、WHDI規格に準拠していることを認証するコンプライアンステストを始めた。

 WHDI規格には、「1対多」のデータ伝送を実現するスイッチング機能が盛り込まれている。これによって、ディスプレイにデータを伝送するモバイル機器の種類をリモコンで切り替えるといった利用シーンを実現できる。

 同社は現在、4K2K(4096×2160画素)の超高精細映像に対応した第3世代品の開発を進めている(図3)。2012年第1四半期にサンプル出荷を開始し、2012年中に量産を始める計画である。

図 図3 AMIMONの開発ロードマップ 現在、第2世代品を量産している。また、第3世代品を開発中である。

 Wi-Fi規格との共存も進める方針で、Wi-FiとWHDIの両方に対応したRFトランシーバICの製品化も検討している。この他、現在開発中の第3世代の品種では、WHDIとWi-Fiの共用を目的に、それぞれのデータを時分割で送る仕組みも盛り込む。これによって、RFトランシーバICを共通化できるようになる。

 今後の開発の方向性は2つあり、1つはモバイル機器向けに低消費電力化と低価格化を進める方向。もう1つは、医療機器や業務用カメラなどに向け、品質の高い映像伝送を追求する方向性である。将来的には、モバイル機器のアプリケーションプロセッサに組み込むIPを提供することも検討している。

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