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産業/医療分野にも無線LAN、無線事業の強化を続けるベンダーの戦略とは無線通信技術 Wi-Fi

サイレックス・テクノロジーは、エンタープライズ分野と医療分野にターゲットを絞り、無線LAN関連事業の強化を続けている。機器への組み込みやすさや技術サポートを売りに、採用拡大を目指す。

» 2011年11月14日 08時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 USBデバイスサーバやPC関連機器を手掛けるサイレックス・テクノロジーが、無線LAN関連事業の強化を続けている。同社はもともとプリントサーバを主力事業としていたが、プリントサーバの市場規模の縮小などを背景に、USBデバイスサーバと無線LANを軸に製品拡充を続けてきた。

 同社の無線LAN関連製品は、最終製品である無線LANルータや組み込み無線LANモジュールなどで構成している。2009年には7%だった売上高全体に占める割合は、2010年には18%に伸びたという。2011年については上半期(1〜6月)において、24%に達する。今後も、組み込み分野を対象に製品強化を続け、2012年には30%に高めることを目標にしている。

写真左は、サイレックス・テクノロジーの業務執行役員兼開発本部ワイヤレス技術開発部長の佐々木勇治氏。写真右は、製品戦略室のプロダクトマネジャーである三浦暢彦氏。

無線認証の代行や技術支援サービスも

 無線LANチップやモジュールを手掛ける企業は多く、競争は厳しい。この市場でどのように勝負していくか――。サイレックス・テクノロジーの事業戦略は明確だ。それは、まずターゲットとする市場をエンタープライズ分野と医療分野に絞ること。そして、機器への組み込みやすさと手厚いサポートを前面に打ち出すことである。

 ここでいうエンタープライズ分野とは、倉庫/商業施設の携帯型端末やデジタルサイネージ、プリンタ、工業/産業機器などである。無線LANの市場の規模としては、ノートPCやタブレットPC、スマートフォンといったモバイル機器が最も大きいものの、これらの分野は競合も多い。「当社が勝負できる特定の市場においても、十分にビジネスになる市場規模が見込める」(同社)と考えている。

図 サイレックス・テクノロジーの組み込み無線LANモジュール 左は同社が2011年11月に発表した「SX-570/SX-580」。Freescale Semiconductorの「i.MX 280」を搭載したCPUモジュールと、写真右の無線LANモジュール「SX-SDMGN/SX-SDMAN」で構成している。

 エンタープライズ分野や医療分野では現在でも、無線を使うことへの不安が完全にはぬぐい去られていない。「例えば、1万回に1回の無線の不具合も許されないようなミッションクリティカルの用途にどのように無線への置き換えを促すか。顧客の3つの要望に応える製品を用意することが大切だ」(同社)という。具体的には、安定した接続性、セキュリティの高さ、機器への実装/動作検証の容易性という要望がある。

 同社が2011年11月に発表した組み込み無線LANモジュール「SX-570」と「SX-580」は、この3つの要望を満たすことを主眼に開発を進めた品種である。1つ目の接続性については、無線の接続範囲を広げるために「APメッシュ」や「ルーティング」という機能を搭載した。これらの機能は古くからあるが、暗号化や認証といった処理と組み合わせたときに処理時間がかかるという課題の解決を進めた。

 2つ目のセキュリティについては、高いセキュリティが求められる用途で標準的に使われている「EAP認証(WPA/WPA2-Enterprise)プロトコル」に対応した。3つ目の機器への実装という観点では、無線LANモジュールにCPUモジュールを組み合わせることで、組み込みやすさを高めた。CPUモジュールには、各種ドライバやサプリカントを実装済みである。

 技術サポートという観点では、無線の各種認証の代行サービスや、各種ドライバやサプリカントを実装するときの技術支援サービスを実施している。1000〜2000台といった小ロット生産にも対応していることも特徴である。

左は、組み込み無線LANモジュールの仕様。右は、組み込み無線LANモジュールを構成する「SX-SDMGN」と「SX-SDMAN」の仕様

 発表した組み込み無線LANモジュールの構成は以下の通り。SX-570には「IEEE 802.11b/g/n」に準拠した無線LANモジュール「SX-SDMGN」、SX-580には「IEEE 802.11a/b/g/n」に準拠した無線LANモジュール「SX-SDMAN」を採用した。いずれも、Qualcomm Atherosの無線チップ「AR6003」が搭載されている。CPUモジュールはSX-570とSX-580ともに共通で、CPUとしてFreescale Semiconductorの「i.MX 280」を採用した。i.MX 280は、動作周波数が454MHzのARM9コアを採用した品種である。SX-570/SX-580ともに、2011年末までにサンプル出荷を開始し、2012年春に量産出荷を始める。

 市場には、無線LANのRFトランシーバー部とベースバンド処理部、プロセッサを1チップ化した製品がある。例えば、GainSpanの無線チップ「GS1011」である(関連記事)。この他、ロームは、ベースバンド処理部とプロセッサを1チップ化した品種を製品化している(関連記事)。これらの品種を使えば、無線LANモジュールとCPUモジュールという2つを使う必要はない。ただ、「プロセッサも1チップ化した品種だと、エンタープライズ分野に求められる高度なセキュリティプロトコルに対応するのは難しいだろう」(サイレックス)と説明した。

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