無線LAN技術の業界団体「Wi-Fi Alliance」が2010年4月に開催した戦略説明会で、新たに打ち出したのが、「Wi-Fiは、低消費電力」というメッセージだった。
無線LAN技術の業界団体「Wi-Fi Alliance」が2010年4月に開催した戦略説明会で、新たに打ち出したのが、「Wi-Fiは、低消費電力」というメッセージだった。
現在、無線LAN技術は、PCのみならずスマートフォンを中心とした携帯型電子機器や民生機器に急速に広がっている。これらの機器にとどまらず、「スマートグリッドを構成する一部である宅内ネットワークにも、無線LAN技術は適している」(Wi-Fi AllianceのMarketing DirectorであるKelly Davis-Felner氏)というのが同団体の主張である。
宅内ネットワーク(HAN:Home Area Network)とは、家庭内のさまざまな家電製品やセンサーをネットワーク接続したもの。家庭内のさまざまな情報や電力の使用状態を、継続的に監視したり、制御することが可能になる(図1、図2、図3)。無線LAN技術は、すでに広く普及している。この既存のインフラを活用すれば、HANを構築するときの障壁は低くなる。
例えば、家庭内に無線LANのアクセスポイント(AP)があれば、APを中心にセンサーネットワークを構築できる。センサーで収集した情報や家電製品の動作状態を、インターネット上のサーバにアップロードすることも容易である。「無線LAN技術で構成したHANは、大きな可能性を秘めている。さまざまなアプリケーションが考えられるだろう」(Kelly Davis-Felner氏)と意気込む。
ただ、「IEEE 802.11a/b/g/n」として規定されている無線LAN技術は、消費電力が大きいというのが、これまでの常識だった。
家電製品やセンサーに無線通信機能を組み込むとき、重要となるのが無線通信に要する消費電力が低いことである。無線機能を組み込んだことによって、家電製品の消費電力が増大してしまうことは許されないだろう。また、電池駆動のセンサーに使ったとき、消費電力が大きければ、電池交換の手間が掛かってしまう。
低消費電力の無線通信技術といえば、「ZigBee」や「Bluetooth」、「ANT」などが広く知られている。また、さまざまな企業が「IEEE 802.15.4」を基にした低消費電力の独自仕様を提供している。これらの低消費電力の無線通信技術に比べ、無線LAN技術は消費電力が大きいとされてきた。Wi-Fi Allianceは、この点に異を唱えているのである。
実際に、複数の企業が「Low power Wi-Fi」をうたう無線LANチップの製品化を進めている。例えば、米Intel社から2006年にスピンアウトして誕生した半導体ベンダーである米GainSpan社では、ZigBeeに匹敵するほど消費電力が低いと主張する無線LANチップの量産を開始した。同社のWorldwide Sales担当のVice PresidentであるEric Taborek氏は、「当社の低消費電力の無線LANチップは、いままさにテイクオフの時期を迎えようとしている」と語った。
低消費電力の無線LANチップの構成や製品を詳しく紹介した「後編」に続く。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.