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いつでもどこでも監視/制御が可能に、低電力Wi-Fiチップで見えた次世代家電の姿(前編)無線通信技術 Wi-Fi

無線LAN技術の業界団体「Wi-Fi Alliance」が2010年4月に開催した戦略説明会で、新たに打ち出したのが、「Wi-Fiは、低消費電力」というメッセージだった。

» 2010年08月01日 00時00分 公開
[前川慎光,EE Times Japan]

 無線LAN技術の業界団体「Wi-Fi Alliance」が2010年4月に開催した戦略説明会で、新たに打ち出したのが、「Wi-Fiは、低消費電力」というメッセージだった。

 現在、無線LAN技術は、PCのみならずスマートフォンを中心とした携帯型電子機器や民生機器に急速に広がっている。これらの機器にとどまらず、「スマートグリッドを構成する一部である宅内ネットワークにも、無線LAN技術は適している」(Wi-Fi AllianceのMarketing DirectorであるKelly Davis-Felner氏)というのが同団体の主張である。

 宅内ネットワーク(HAN:Home Area Network)とは、家庭内のさまざまな家電製品やセンサーをネットワーク接続したもの。家庭内のさまざまな情報や電力の使用状態を、継続的に監視したり、制御することが可能になる(図1図2図3)。無線LAN技術は、すでに広く普及している。この既存のインフラを活用すれば、HANを構築するときの障壁は低くなる。

図1 図1 スマートフォンを使って室内温度を確認 米GainSpan社が見せたデモの様子である。無線LANのアクセスポイント(AP)を介して、家電製品の状態やセンサーで測定した情報を、携帯電子機器で確認する場面を想定している。家電製品には多くの場合、内部の情報を表示するディスプレイが用意されていない。日ころ携帯している機器を、情報の表示や家電制御に使おうというアイデアである。APを介さずにアドホックモードで、直接家電を監視・制御することも可能である。

 例えば、家庭内に無線LANのアクセスポイント(AP)があれば、APを中心にセンサーネットワークを構築できる。センサーで収集した情報や家電製品の動作状態を、インターネット上のサーバにアップロードすることも容易である。「無線LAN技術で構成したHANは、大きな可能性を秘めている。さまざまなアプリケーションが考えられるだろう」(Kelly Davis-Felner氏)と意気込む。

「今まさに、テイクオフの時期」

 ただ、「IEEE 802.11a/b/g/n」として規定されている無線LAN技術は、消費電力が大きいというのが、これまでの常識だった。

 家電製品やセンサーに無線通信機能を組み込むとき、重要となるのが無線通信に要する消費電力が低いことである。無線機能を組み込んだことによって、家電製品の消費電力が増大してしまうことは許されないだろう。また、電池駆動のセンサーに使ったとき、消費電力が大きければ、電池交換の手間が掛かってしまう。

 低消費電力の無線通信技術といえば、「ZigBee」や「Bluetooth」、「ANT」などが広く知られている。また、さまざまな企業が「IEEE 802.15.4」を基にした低消費電力の独自仕様を提供している。これらの低消費電力の無線通信技術に比べ、無線LAN技術は消費電力が大きいとされてきた。Wi-Fi Allianceは、この点に異を唱えているのである。

図2 図2 スマートフォンを使って室内の照度を確認するデモ 米GainSpan社が見せたデモの様子。照度計と無線LAN機能を組み合わせた。照度計の測定結果を、スマートフォンで確認している様子。
図3 図3 スマートフォンを使って、電力品質を確認するデモ 米GainSpan社が見せたデモの様子。コンセントに接続した電力計で測定した消費電力や電圧、電流、周波数、力率を、スマートフォンで確認している様子。このデモでは無線LANのアクセスポイントを介さずに電力計と直接接続していた。

 実際に、複数の企業が「Low power Wi-Fi」をうたう無線LANチップの製品化を進めている。例えば、米Intel社から2006年にスピンアウトして誕生した半導体ベンダーである米GainSpan社では、ZigBeeに匹敵するほど消費電力が低いと主張する無線LANチップの量産を開始した。同社のWorldwide Sales担当のVice PresidentであるEric Taborek氏は、「当社の低消費電力の無線LANチップは、いままさにテイクオフの時期を迎えようとしている」と語った。

低消費電力の無線LANチップの構成や製品を詳しく紹介した「後編」に続く。

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