HDDに比べて、SSDはまだかなり高価である。だが、洪水の影響によりSSDへの移行が進む可能性が出てきた。とりわけ、ノートブックPCでは、その動きが加速するとみられている。
タイの大洪水は、PCメーカー各社に多大な影響を及ぼしている。既にHDDの世界的な供給不足が生じているが、そのためにSSD(Solid State Drive)への移行が加速するのではないかとの見方もある。
マザーボードメーカーであるGigabyte Technologyのマーケティングマネージャは、EE Times誌の取材に応じ、「今回の大洪水による影響で、2011年第4四半期におけるHDDの出荷数量が25%減少するとの見方があるが、それは言いすぎだ。実際には、おそらく10〜15%減になるだろう」と述べている。
また、Gigabyte Technologyの広報担当者は、「当社は今のところ、影響を受けていない。しかし、PCメーカーがいつWestern Digital(WD)やSeagate TechnologyにHDDを発注できるようになるかが分からないため、市場は混乱している」と語った。
WDのタイ工場は、最大で2m浸水したという。一方、Seagateの工場は、浸水は免れたものの、モーターやヘッドなどの部品の生産量が極めて少ない危機的な状況にある。
Seagateの広報担当者によると、台湾の販売経路では、販売業者がHDDを買い占める動きが始まっており、HDDメーカーによる値上げ幅が約50%だったにもかかわらず、価格は200〜300%も上昇しているという。
同担当者は、「調達可能な数量や、発注可能になる時期などがまったく分からない状況にある」と述べる。このため、DellやHewlett Packard(HP)、Acerなどの大手PCメーカー向けにHDDを調達するバイヤーは、中国市場を探し回って可能な限り多くのHDDを確保し、深刻な供給不足に備えているという。
同氏は、「既にHDDの供給不足が発生している地域もある。この影響は、全体に及んでいくだろう」と述べる。
台湾の報道機関によると、ASUSTeK Computerなどの大手メーカーでさえも、PCの出荷数について、2011年第3四半期には630万台だったが、同年第4四半期には600万台に減少すると予測しているという。ただしアナリストの中には、この減少幅を少なく見積もりすぎだとして、実際には540万〜570万台に減ると見る者もいる。また、Micro-Star International(MSI)やASRockも、HDDの供給不足による影響で、出荷量が10%減少すると予測しているという。
今回、特に大きな打撃を受けているのは2.5インチHDDだ。3.5インチHDDは、大半がマレーシアや中国本土の工場で生産されているため、それほど大きな影響はない。小型のHDDは通常、ノートPC市場向けに生産されている。
Gigabyte Technologyの広報担当者は、「ノートPCの価格が大幅に上昇すれば、消費者が、安価な代替品として再びデスクトップPCの購入を検討し始める可能性もある」と述べる。
また、同氏は、「洪水の影響でSSD市場は活性化するかもしれない」との見解を示している。
Gigabyte Technologyの広報担当者によると、「SSDが普及するにはあと2年ほどかかるというのが、一般的な見方であった」という。
SSDの価格はいまだに高く、0.5テラバイトの容量だと1000米ドル前後に上る。64ギガバイトのSSD1個で、1テラバイトのHDDが3つ買えるほどだ。しかし、それはHDDの供給不足がない場合の話である。
Gigabyte Technologyの広報担当者は、「洪水や、そこから波及するさまざまな影響によって、SSDへの移行は進むだろう。とりわけ、ノートブックPC市場では、SSDを搭載する動きが加速するものと思われる」との見方を示した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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