DRAM市場にとって、ノートPCの分野は生命線である。DIMMが不要の「Ultrabook」が普及すれば、DRAM市場は大きな痛手を受けることになるかもしれない。
米国の市場調査会社であるIHS iSuppliは、Intelが推進している低消費電力のノートPC「Ultrabook」が今後成長するに伴い、半導体市場に変化がみられるようになるとの予測を発表した。センサーやパワー/アナログ半導体などの市場は拡大すると期待されるが、一方で、DRAMモジュールなどの市場機会が縮小する見込みだという。
iSuppliの予測によると、「Ultrabookの出荷台数は、2011年には100万台にも満たないとされているが、2015年には1億3650万台に達し、ノートPCの世界出荷台数の42%を占めるようになる」という。
Ultrabookは超薄型かつ軽量であるため、設計や部品の選定を従来のモバイルPCとは変える必要がある。このため全体的に見ると、半導体チップメーカーにとっては大きな成長をもたらす機会となるだろう。ただし、Ultrabookが急激な成長を遂げることで、ノートPC市場に部品を供給している半導体メーカーの再編成が進む可能性もあるという。
iSuppliのMEMS/センサー部門で担当主席アナリストを務めるJeremie Bouchaud氏は、「センサーの搭載量に関しては、Ultrabookは、既存のノートPCよりもメディアタブレットに近い」と述べる。
同氏によると、「メディアタブレットは、加速度センサーなどのMEMSデバイスから、コンパスなどの非MEMSデバイスまで、さまざまな種類のセンサーを搭載している。一方、既存のノートPCには、センサーはほとんど搭載されていない」という。
「2015年には、Ultrabookの出荷台数が、ノートPCの世界出荷台数の42%に達すると予測されていることから、MEMS市場も大きく成長すると期待できる」(Bouchaud氏)。
また、ノートPCの出荷台数全体に占めるUltrabookの割合が増加することにより、アナログ半導体の中でも、特に電力管理デバイスの分野にもたらされるメリットが大きいという。薄型軽量のUltrabookは、既存のノートPCよりも、パワー/アナログ部品の高度な統合を必要とするためだ。
iSuppliの電力管理担当シニア主席アナリストを務めるMarijana Vukicevic氏は、「このため、Ultrabookが搭載する電力管理IC/モジュールなどの重要度が高まり、アナログ半導体メーカーの市場機会が拡大する」と述べる。
その一方で、メディアタブレットと同じく薄型のUltrabookの台頭は、DRAMモジュール市場にとってはデメリットとなる。特に、メモリアップグレードモジュールの市場が影響を受けそうだ。
iSuppliのアナリストで、メモリ需要予測を担当するClifford Leimbach氏によると、現在販売されているUltrabookの大半が、DRAMチップをマザーボードに直接はんだ付けする手法を採用しているという。こうした手法により、設計の合理化を実現できるだけでなく、従来のDIMM(Dual Inline Memory Module)も不要になるとしている。
ノートPC市場は、DRAMモジュールにとって、PC搭載用およびメモリ容量のアップグレード用の両方において重要な市場である。このため、Ultrabookの出荷台数が増加すると、高性能DRAMモジュール市場は悪影響を受けることになるだろう。ノートPC用のメモリアップグレードモジュールの出荷数は、Ultrabookの影響により、初期の段階ではわずかに減少する程度だが、2015年には13.5%減となる1080万台ほどに減る見込みだという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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