メディア

自前主義からオープンソース活用へ、トヨタが車載情報機器の開発方針を転換ビジネスニュース 業界動向

トヨタ自動車は、次世代車載情報機器の開発を進める上で、Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアを積極的に活用する方針を明らかにした。

» 2011年11月28日 18時43分 公開
[朴尚洙,EE Times Japan]

 Linux Foundationが開催した自動車アプリケーション向けLinuxのイベント「Automotive Linux Summit」(2011年11月28日、パシフィコ横浜)において、トヨタ自動車で次世代車載情報機器の開発トップを務める第1電子開発部主査の村田賢一氏が講演を行った。同講演で村田氏は、「トヨタ自動車が考える自動車の将来像を達成するため、これまでの自前主義から脱却し、Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアを積極的に活用していく」と述べた。

 村田氏は、今後の自動車において利用可能になる機能として、リモートサービス、ITS(高度道路情報システム)、利便性の向上、スマートグリッドの4つを挙げる。そして、「これらの機能を実現するためには、ICT(Internet Communication Technology)をいかに活用できるかが鍵になる」(同氏)と強調する。

トヨタ自動車の村田賢一氏トヨタ自動車が想定する今後の自動車で利用可能になる機能 左は、トヨタ自動車の村田賢一氏。右は、トヨタ自動車が想定する今後の自動車で利用可能になる機能である。

 これまでの自動車業界において、カーナビゲーションシステムなどの車載情報機器のソフトウェアは、各企業が自前で開発するプロプライエタリなものが一般的だった。村田氏は、「車載情報機器が自動車のローカルデバイスである分にはそれでも問題はなかった。しかし、今後は車載情報機器が無線通信によりインターネット接続されることは当たり前になってくる。そういった車載情報機器の機能向上を果たすためにはICTを活用する必要があるが、自動車業界はICTに関するノウハウを持っていない。自前主義のままでは、急速な進化を続けるICTをキャッチアップすることは極めて困難だ」と語る。

 その解決策として同氏が示したのが、「Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアの積極的な活用」である。ICTで広く利用されているオープンソースソフトウェアのリソースを自動車向けに最適化することにより、先述したような機能を持つ、次世代の車載情報機器を早期に実現できるようになるわけだ。

 村田氏は、「例えば、Linuxを車載情報機器で利用しやすくするには、ブート時間の短縮など、車載機器の組み込みOSとして必要となる仕様についてLinuxコミュニティに考慮してもらう必要がある。もちろん、自動車業界からもLinuxコミュニティに積極的に働き掛ける必要があるだろう」と述べている。

 そこでトヨタ自動車は、2011年7月からLinux Foundationのゴールドメンバーとして参加することで、Linuxコミュニティと自動車業界の関係を深めようとしている。また、同社とICTとの関わりでいえば、Microsoftやsalesforce.comなどIT企業との連携も進めている(Automotive Electronicsの関連記事)。同年11月にはIntelと次世代車載情報機器に関する提携を発表した。

 村田氏は、ソニーで民生用機器のソフトウェアプラットフォームや「Play Station 3」のOSである「Cell OS」の開発を担当したのち、2008年にトヨタ自動車に転籍したという異色の経歴を持つ。「自動車業界よりもIT業界に近い人間」と語る同氏が、トヨタ自動車で次世代車載情報機器開発のチーフエンジニアを務めていることからも、同社における自前主義からオープンソース重視への方針転換が見てとれる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.