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“ポストシリコン”狙うカーボンデバイス、性能も製造性も着実に向上プロセス技術 IEDM2011(2/2 ページ)

» 2011年12月13日 12時41分 公開
[福田昭,EE Times Japan]
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200mmウエハーのラインでグラフェンICを作る

 グラフェンを使ったトランジスタの製作はこれまで、非常に小さな基板を使ったものがほとんどだった。いわゆる実験室レベルでの試作である。これに対してIBMは、一般的な半導体の製造ラインである直径200mmウエハーの生産ラインを利用してグラフェンFETと受動素子によるICを試作してみせた(Shu-Jen Han他、講演番号2.2)。

 ウエハーは高抵抗シリコンである。このウエハー上でグラフェンのFETとアルミニウム(Al)のコイルを集積して入力周波数信号を2倍にする逓倍回路を試作した。入力信号の周波数が1GHzのときに、2倍に相当する2GHzの出力信号を確認した。入力電力は0dBm、出力電力は−25dBmである。

図4 図4 グラフェンICの構造と製造工程 (クリックで拡大)
図5 図5 試作したグラフェンICの電子顕微鏡写真と出力周波数特性 (クリックで拡大)

チャネル長9nmのCNTトランジスタ

 カーボンナノチューブのデバイスでは、9nmと極めて短いカーボンナノチューブ(CNT)をチャネルに利用したトランジスタ(CNTトランジスタ)をIBMが試作した(Aaron D. Franklin他、講演番号23.7)。カーボンナノチューブの直径は1.3nmである。

 試作したトランジスタのオン電流(チャネル幅当たり)は1.76mA/μA(電源電圧0.4V)と高い。発表によると、チャネル長10nmのシリコンナノワイヤーによるトランジスタの4倍のオン電流を達成できたという。電流電圧特性は飽和特性を示しており、トランジスタとしての基本的な動作を確認できた段階である。速度や周波数などの動特性の確認は、これからになる。

図6 図6 カーボンナノチューブ(CNT)トランジスタの構造(左)と試作したトランジスタの電子顕微鏡写真(中央と右) (クリックで拡大)
図7 図7 試作したチャネル長9nmのCNTトランジスタのサブスレッショルド特性(左)と電流電圧特性(右) (クリックで拡大)

Profile

福田昭(ふくだ あきら)

テクノロジーライター。複数の技術情報誌で記者、副編集長、編集長を務めた後、フリーランスとして活動。電子(エレクトロニクス)技術分野をメインに、科学技術分野全体をカバーする。


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