2010年に台湾の大手EMSで相次いだ工場労働者の自殺を受けて、その企業をサプライチェーンに組み込むAppleにも批判が寄せられており、このほど公正労働協会に加盟する。同協会は工場の労働環境改善を掲げており、加盟企業は同機関が制定した行動規範や行動原則をサプライチェーンにわたって順守するという。
Appleが製品の生産を委託する台湾のHon Hai Precision Industry(ホン・ハイ・プレシジョン・インダストリー)では、2010年に工場労働者の自殺が相次いだ。これを受けてAppleにも各方面からの圧力が及んでおり、それに応じる形でこのほど同社は、世界各地の工場の労働環境の監視や評価を行う第三者機関の公正労働協会(Fair Labor Association:FLA)に加盟することに合意した。
FLAは、2012年1月13日に発表した声明の中で、今後、Appleのサプライチェーンに組み込まれている工場の労働環境を独自に評価し、同機関のWebサイトに調査結果を詳しく掲載すると述べた。同機関によると、テクノロジ系企業がFLAに加盟するのはAppleが初めてだという。
Hon Hai Precision Industryは、「Foxconn」というブランドで知られるEMS(電子機器の受託製造サービス)の最大手企業である。2010年に十数名の工場労働者が相次いで自殺したため、Appleにも批判が寄せられていた。労働者の賃金の安さや労働環境の厳しさを自殺の原因として指摘する声もあった。
Foxconnは、「iPad」や「iPhone」をはじめとするApple製品のほか、Hewlett-Packard(HP)やDell、Nokia、Samsung Electronicsなどのエレクトロニクス企業からも製造を請け負っている。
Appleは2011年1月13日に報告書を公表し、同社に部品やサービスを提供している156社のサプライヤーの名前を明らかにした。リストアップされたサプライヤーの合計で、Appleの製品の世界における調達費用(部品、製造、組み立てを含む))の97%を占めるという。
FLAは1999年、米国のビル・クリントン大統領(当時)により設立された。世界各地の工場の労働環境改善を使命として掲げる同機関には、Nike(ナイキ)やNew Balance Athletic Shoe(ニューバランス)、New Era Cap(ニューエラキャップ)といったアパレル系企業が既に加盟している。FLAによると、加盟企業は、同機関が制定した行動規範「FLA Workplace Code of Conduct」や行動原則「Principles of Fair Labor Responsible Sourcing」を、サプライチェーン全体にわたって順守することを誓約するという。
2011年、FLAはAppleと共同で、労働者の権利や労働基準といった概念が、同社のサプライチェーンで働く労働者にも根付くよう促す研修プログラムの効果を評価した。Appleは今後2年以内に、FLAが掲げた義務を順守するプログラムを実施する予定だという。
FLAは、加盟企業のサプライヤーの工場の労働環境を独自に評価する以外にも、さまざまな取り組みを実施している。例えば、市民社会団体や大学、企業などとの協力のもと、社会責任プログラムの開発や改善の他、工場やブランドのレベルに合わせた研修プログラムや能力開発プログラムの実施にも取り組んでいる。
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