半導体/家電メーカーが、タブレット端末のユーザーエクスペリエンスの向上に取り組む今、802.11ac/802.11adの次世代Wi-Fi規格に大きな期待が寄せられているという。
BroadcomのHome and Wireless Networking事業でシニアバイスプレジデントを務めるMichael Hurlston氏によると、「チップメーカーや家電メーカー各社が、家庭におけるタブレット端末のユーザーエクスペリエンスの向上を目指していることから、接続性を向上する新しいWi-Fi技術に注目が集まっている」という。
Hurlston氏は2012年1月31日(現地時間)、米国カリフォルニア州サンタクララで開催された「DesignCon 2012」のパネルディスカッションにおいて、「Wi-Fiの分野では今、数多くの革新的な技術が生み出されている」と語った。
Broadcomは現在、同社が「5G Wi-Fi」と呼ぶIEEE 802.11ac規格を推進しており、2012年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催された「2012 International Consumer Electronics Show(CES)」では、802.11acに対応した無線LANチップの新ファミリを発表している。802.11acは、現在主流であるIEEE 802.11nに比べ、通信速度と信頼性を確実に高めることができるという。
Hurlston氏は、Broadcomが“5G Wi-Fi”という名称を推進する理由として、民生機器向けに展開されるWi-Fi規格の5世代目であることと、Wi-Fiの新バージョンの命名規則がこれまで非常に分かりにくいものだったことを挙げている。同氏は、「使えるアルファベットがもうない」と冗談を言った上で、「一般的なユーザーは、802.11acという名称から、この規格が802.11nよりも進化したものだとは分からないだろう。それよりは、携帯電話機の世代を示すためにも使われている3G、4Gといった表現の方が、聞き慣れている」と述べた。また、同氏によれば、他の企業も、この5G Wi-Fiという名称を使い始めているという。
Wi-Fi分野の次世代技術には、802.11acの他、IEEE 802.11adも挙げられる。Hurlston氏によれば、60GHz帯を利用する802.11adは、伝送距離は比較的短いものの、驚異的な通信速度を実現するという。同氏は802.11adを“革命(revolution)”と称したが、一方の802.11acには“進化(evolution)”という表現を用いるにとどめている。
複数の企業が802.11adに対応したチップを2012年に発表するとみられるが、Hurlston氏は、「当社としては、802.11adの導入に向けた準備は、市場ではまだ整っていない」との見解を示した。
一方でHurlston氏は、家電メーカーが2012年半ばには、802.11ac、つまり5G Wi-Fiを採用した製品を発売すると予想している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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