米国、アジアに対する競争力を取り戻すべく、450mmウエハーへの移行を加速させる――。これが、欧州の半導体メーカーが出した結論のようだ。
ドイツのミュンヘンで2012年2月26〜28日に開催された半導体関連のシンポジウム「ISS Europe 2012」では、半導体技術に関するさまざまな発表や議論が行われた。その中で、今回特に注目を集めたのが、450mmウエハーへの移行にまつわる議論だ。多くの半導体チップメーカー、製造装置メーカー、材料メーカーは、「450mmウエハーへの移行によって、欧州は今後15年間で、最先端の半導体製造において米国やアジアと肩を並べる競争力を取り戻すことができるかもしれない」という考え方を支持したようだ。
欧州では、450mmウエハーへの移行に向けて、これまでもさまざまな取り組みが行われてきた。
その取り組みの中で、欧州における450mmウエハーへの移行を推進するために結成されたのが、「EEMI450(European Equipment Manufacturing Initiative 450)」だ。EEMI450は、450mmウエハーの製造を目指す企業間の連携やプロジェクトを支援することを目的に、欧州の半導体製造装置メーカーや材料メーカーによって2009年に設立された。
ISS Europe 2012のパネルディスカッションでは、300mmウエハーから450mmウエハーに移行することの重要性について議論が交わされた。
STMicroelectronicsでグループバイスプレジデントを務めるAlain Astier氏は、「450mmウエハーへの移行に不安はない。欧州には現在、当社が所有するフランスのCrolles工場やGLOBALFOUNDRIESが所有するドイツのDresden工場といった最先端の300mmウエハー製造拠点があり、450mmウエハーへの移行に対応する準備ができている」と述べている。
GLOBALFOUNDRIESでバイスプレジテント兼ゼネラルマネジャーを務めるRutger Wijburg氏は、「半導体業界は今後、最先端半導体技術を適用して微細化を進める“More Moore”と、ムーアの法則に沿って微細化するわけではない機能をデバイスに取り入れていく“More than Moore”の両方の側面から半導体を進化させていく必要がある。450mmウエハーへの移行は、この両方を実現する可能性を秘めている」と述べている。
Texas Instruments Europeでマネジングディレクタを務めるMichael Hummel氏は、450mmウエハーへの移行を支持する一方で、「450mmウエハーへ移行するとしても、アナログで必要とされる200mmウエハーの製造も継続していく必要がある。EU(欧州連合)がその両方に対応することを期待している」と語った。
また、Hummel氏は、「450mmウエハーに移行するには、文化的な課題や法律的な問題、製造に関わるコストの問題をクリアし、若手エンジニアを業界に呼び込む必要がある」と指摘している。
一方、Infineon Technologiesでオペレーション・研究開発担当取締役兼労務担当ディレクタを務めるReinhard Ploss氏は、「微細化を目指しながらも、システムインテグレーションを忘れてはならない」と警鐘を鳴らす。「より最適なソリューションを提供するには、顧客の要望を理解することが大切だ」(同氏)。
Robert Boschの投資部門であるRobert Bosch Venture Capitalでマネジングディレクタを務めるClaus Schmidt氏は、「EUは、ベンチャーキャピタルの支援を続けるべきだ」と説く。同氏は「欧州には、革新的なアイデアを持つ新興企業が必要だ。また、新興企業は、存続していくために販売ルートを確保する必要がある。シリコンバレーと欧州の起業文化には、明らかな違いがある。欧州では新興企業の失敗は、文字通り失敗でしかない。だが、シリコンバレーでは、失敗も経験の1つとして、新興企業は次の挑戦に挑んでいく」と文化面での課題を指摘した。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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