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ICカード内蔵可能な二次電池をNECが開発、回路基板と統合し厚さ0.3mmにエネルギー技術 二次電池

薄くて曲げられるという特長を備える「有機ラジカル電池」を薄型化した。標準規格で厚みが0.76mmと定められているICカードに内蔵でき、大きな電力を必要とする画面表示機能や、通信機能、高度な暗号化処理機能を搭載できるようになるという。

» 2012年03月05日 11時56分 公開
[EE Times Japan]

 NECは、厚さが0.3mmと極めて薄い二次電池を開発した(図1)。標準規格で厚みが0.76mmと定められているICカードに内蔵できるという。同社が2001年に提案した「有機ラジカル電池」を改良した。この電池の薄型化はこれまで0.7mmが限界で、ICカードに内蔵するのは難しかった。

 有機ラジカル電池は、プラスチックの一種である有機ラジカル化合物を電極活物質に利用した電池である。有機ラジカル化合物と炭素繊維からなる複合正極に電解液を浸透させることで、ゲル状で柔軟性がある電極を実現しており、薄くて曲げられるという特長を備える。また、ラジカル部位の酸化還元反応により充放電を行う原理で、高出力性(一度に大きな電流を放電可能)という特長もある。「リチウムイオン電池をはじめとする他の二次電池には無い特長を生かし、ICカードの高機能化や電子ペーパーなどへの適用が期待されている」(NEC)。

図1 図1 0.3mmと薄い有機ラジカル電池 出典:NEC

 NECは今回、印刷技術を用いて回路基板と有機ラジカル電池を一体化することで、厚みを従来の1/2以下となる0.3mmまで薄型化した。具体的には、電池を包み込む外装材として、回路基板にも利用可能な厚さ0.05mmのポリマーフィルムを使用した。そして、印刷技術を使って負極を回路基板上に直接形成するとともに、負極の上にセパレータ(絶縁体)やラジカルポリマー正極などを積層して作製することで、0.3mmの厚さを実現している。従来品は、外装材として利用していたアルミラミネートの厚みだけで0.2mmを要していたという。

 さらに今回の回路基板上には小型電子部品も実装できるので、電池に加えてアンテナやICを実装した回路基板を用いれば、電池を内蔵した規格サイズのICカードが実現可能になる。「大きな電力を必要とする画面表示機能や、通信機能、高度な暗号化処理機能をICカードに搭載可能になるなど、幅広い用途への適用を実現した」(同社)。

 3×3cmで厚さが0.3mm、電池容量が3mAhの試作品で、5kW/lと高い出力密度が得られていることを確認した。この試作品を使うと、1回の充電で表示画面を2000回更新したり、フラッシュを360回連続発光させたり、位置情報を35回送信したりできるという。さらに、充放電サイクル試験では、500回の充放電を繰り返した後でも初期容量に対して75%の容量を維持できることを確認した。「携帯電話機用リチウムイオン電池と同等の性能であり、高い実用性を実証できた」(NEC)。

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