2011年12月9日に始まった本連載「エンジニアのための市場調査入門」も今回が最終回である。最初にEE Times Japanの編集者からこの話が持ち上がったのは暑いころだと記憶しているので、既に半年以上経過したことになる。
この仕事を受ける際、私はこれまでも若手社員に社内研修などで「市場調査の何たるか」といったことを話してきたので、結構簡単に書けるのではないかとタカをくくっていた。ところがそんなことはなく、ある部分は大いに苦しんだ。特に、「ヒアリング」は自分で考えていた以上に個々のノウハウが詰まっており、どこまで書いてよいのか、書いたとしても標準にはなり得ないのではないかとも考えた。
私は矢野経済研究所に入社以来、職業としてマーケットリサーチを20数年やってきた。本連載の読者の多くはエンジニアということだが、今後はエンジニアがマーケティング・リサーチも行い、さらには営業・開発などの機能を担うことも求められてくるだろう。先の回でも書いたが、エンジニアがマーケティング・リサーチ能力を身に付けるということは、「ハイブリッドでハイパーなビジネスパーソン」になるということだ。そうなれば少なくとも開発テーマの設定などにおいて、研究者や技術者の「独りよがり」といったことからは解放されるかもしれない。
これまでお付き合いくださり、ありがとうございました。私の書いた文章がほんのわずかでも、皆さまのお役に立てれば、これほどうれしいことはありません。
田村一雄(たむら かずお)
矢野経済研究所CMEO事業部の事業部長。1989年に矢野経済研究所に入社。新素材の用途開発の市場調査に広く携わる。その後、汎用樹脂からエンジニアリングプラスチック、それらの中間材料・加工製品(コンパウンド、容器包装材料、高機能フィルムなど)のマーケティング資料を多数発行した。現在は、デバイス領域まで調査領域を広げ、エレクトロニクス分野の川上から川下領域を統括している。知的クラスターへのコンサルティング実績も有する。2012年1月より産業横断的な新商品開発をミッションとする事業企画推進部統括兼務。
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