米大学が、銅とグラフェンの複合材料を利用したヒートスプレッダを開発した。銅のみを使った従来品よりも冷却性能が高い上にコストを抑えられるため、「使ってみたい」という声が早くも上がっているという。
米ノースカロライナ州立大学の研究員であるJag Kasichainula氏は、カーボン(炭素)を使用して電子機器を冷却する手法を発表した。シート状の炭素材料であるグラフェンを利用した新しい合成材料を使うことで、銅だけを使った場合に比べて、より効率的かつ安価に電子デバイスを冷却できるという。
銅とグラフェンの複合材料を使って作製したヒートスプレッダを、インジウム・グラフェン界面膜を使ったマイクロチップに接合すると、現在使われているような純銅で作製されたヒートスプレッダと比べて、25%速く熱が拡散する。さらに、この技術は従来のヒートスプレッダよりも銅の使用量が少ないため、製造コストを低く抑えられることから、特に、レーザーやパワー半導体のように大量の熱が発生する電子デバイスに有効だという。
Kasichainula氏は、「銅・グラフェン複合材料とインジウム・グラフェン界面膜は、両方とも銅よりも高い熱伝導率を有する。さらに、銅の価格が高騰している現状では、これらの材料のコストが銅と比べて低いことも大きなメリットになる」と説明している。有効媒質近似(EMA:Effective Medium Approximation)によると、銅・グラフェン複合材料は厚さ200μmで蒸着できるという。EMAとは、熱伝導率をモデル化し、複数の物質から成る媒質の熱伝導性を決定する理論的手法である。
同氏は、「製造業者からは、電気化学的な蒸着プロセスを適用した銅・グラフェンヒートスプレッダの製造に向け、すぐにでも設備を一新したいという声も上がっている。こうした声に応えるべく、製造業者向けに設計図を作成した」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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