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2012〜13年は目が離せない!! 新たな社会インフラ導入へ無線技術の準備整う無線通信技術 スマートメーター(2/7 ページ)

» 2012年07月02日 14時30分 公開
[前川慎光EE Times Japan]

スマートメーター用無線の業界団体が活動スタート

 2012年4月27日。150名もの業界関係者が、東京都内のホテルに詰めかけた。スマートユーティリティネットワークを対象にした無線通信技術に関する業界団体「Wi-SUN Alliance」が設立後初めて開催したオープンハウス(説明会)に参加するためだ。説明会では、製品化に欠かせない「インターオペラビリティ(相互運用性)試験」の実施スケジュールや、同団体の運営方針、参加条件などが公表された。新たな社会インフラを作る無線ネットワークが、研究段階から実際の導入段階へと移行しつつあることを示す、象徴的なイベントと捉えることができるだろう。

 「象徴的なイベント」はこれだけではない。宅内の家電機器の遠隔制御やモニタリングに活用できるホームネットワークプロファイルを策定する業界団体「ECHONET CONSORTIUM(エコーネットコンソーシアム)」は、ECHONET Lite規格の互換性確認テスト(プラグフェスト)を2012年4月に開催し、適合性認証を付与するための試験の受付を同月に始めた。

図 Wi-SUN AllianceのChairmanとCo-Chair 左から、Interoperability担当ChairのChin Sean Sum氏、Co-chair, Board, Wi-SUN(Wi-SUN理事会共同議長)のRaj Vaswani氏、Marketing担当ChairのBhupender Virk氏、Co-chair, Board, Wi-SUNの原田博司氏、Chairman, Wi-SUNのPhil Beecher氏。出典:Wi-SUN Alliance
Wi-SUN Allianceが2012年4月に開催したオープンハウスの展示の様子。出典:アナログ・デバイセズ

 さらに2012年7月25日には、大規模かつ低消費電力の無線ネットワークに適した周波数帯である920MHz帯が国内で本格的に開放され、全ての周波数チャネルが利用できるようになる。2012年内には、スマートグリッドを対象にした新たな無線プロファイルである「ZigBee Smart Energy Profile(SEP) 2.0」準拠をうたう無線マイコンの準備が進む見込みだ。既に、Texas InstrumentsやSTMicroeletrocis、Freescale Semiconductorが、ZigBeeのSEP 2.0に準拠した無線マイコンの製品化を表明している。

 スマートグリッドやスマートメーター、スマートハウスといった言葉は、今からさかのぼること4年前の2008年ころから“バズワード”として広く使われてきたが、これまではコンセプトや枠組みの議論がほとんどだった。ようやく、実際の機器を開発できる土台が整い始めるのが、2012年、2013年という時期といえるだろう。それでは上に挙げた幾つかの動向について、技術内容や意義を1つ1つ見ていこう。

無線に必要な特性は「屋内」と「屋外」で異なる

 一言で、無線を使ったネットワークといっても対象や範囲はさまざまだ。大きく、「屋外(スマートユーティリティネットワーク)系」と、「屋内(HEMS/BEMS/スマートハウス)系」に分けることができる。

 前者の屋外系では、各家庭に設置されたスマートメーターから、「MDMS(Meter Data Management System)」と呼ばれる管理システムや、データの収集管理局にデータを集約する。後者の屋内系は、いわゆるホームネットワークを構築し、各種センサーや、照明、空調、家電、太陽光発電パネル、蓄電池、電気自動車などを連携させるために使われる。

図 屋外と屋内の無線ネットワークの全体像 屋外と屋内それぞれで、求められる技術要件が異なる。屋内では、「ZigBee Smart Energy Profile(SEP) 2.0」や「ECHONET Lite」がアプリケーションプロファイルとして想定されているが、物理層/MAC層には幾つかの候補がある。例えば、IEEE 802.11系やIEEE 802.15.4、IEEE 802.15.4gなどである。

 例えば、屋内の無線ネットワークを活用すれば、各種センサーの情報を活用することで照明や空調の電力消費量を抑えたり、家庭全体の電力消費量をモニタリングし、太陽光発電パネルや蓄電池の稼働状態を制御するといったことが可能になるだろう。屋外の無線ネットワークの用途としては、各種メーターの検針データを効率的に収集したり、電力の消費状態に応じて電力供給側が供給量を制御する「デマンドレスポンス(需要応答)」を実現するといったことが想定されている。

 当然のことながら、屋外と屋内の無線ネットワークでは、求められる特性が異なる。主にスマートメーターのデータを収集する屋外系では、「高信頼(通信の安定性)」、「大規模」、「到達性の高さ(通信範囲の広さ)」、「低消費電力」といった指標が重要だ。水道やガス、電力の検針データは消費者が支払う料金に直結するため、無線であっても確実にデータを収集する必要がある。

 100台、1000台といった規模のスマートメーターからデータを収集したり、電波環境の悪い場所に置かれたスマートメーターから、データを集めるといったことも想定しなければならない。この他、水道やガスのメーターでは、電力メーターとは異なり、安定した電源が得られないケースがあり得る。従って、無線通信方式には、電池を使ったときにも長期間安定して稼働させることができる低消費電力性が求められるだろう。

 一方のHEMSやBEMS、スマートハウスといった屋内系では、使用する機器にも依存するが、どちらかというと、「低消費電力」、「干渉回避」、「相互接続性」といった指標が重要になる。電池駆動のデバイスやセンサーに使うには、消費電力が低いことが特に重視される。また、宅内で使う他の無線通信(Wi-FiやBluetoothなど)からの干渉に耐性があることや、異なるベンダー間の機器が共存または相互に通信できること、比較的規模の大きなビルや商業施設での利用を想定し、広い通信範囲を確保できることも大切だ。

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