最後に、IEEE 802.15.4gの無線システムを設計するために必要な、半導体製品やソフトウェア製品について触れよう。現在、IEEE 802.15.4gの無線システムを対象したRFトランシーバICは、10社以上が提供している。
その中の1社であるAnalog Devices(ADI)は2012年に入って、スマートメーター向けRFトランシーバ「ADF7023-J」の機能を拡張するファームウェアモジュール群「15d4」を追加した(関連記事:国内のスマートメーターに最適化した無線送受信ICをアナログ・デバイセズが発売)。これによって、「IEEE 802.15.4g向けとして、最適な構成で提供できるようになった」(同社)という。
ADF7023-Jは、サブGHz帯(902〜958MHz)に対応したRFトランシーバICで、GFSK方式の変調/復調回路の他、パワーアンプや低雑音アンプ(LNA)、PLL、VCO、アンテナスイッチ、8ビットRISCプロセッサ、電源回路などを集積している。スマートメーターの他、ホームオートメーション、ビルオートメーション、センサーネットワークといった用途を想定し、求められる性能や機能をふんだんに取り入れた品種だという。
これに新たに提供したファームウェアモジュール群を追加すれば、IEEE 802.15.4g対応のパケット生成/処理の他、アンテナダイバーシティや「ARIB STD-T108」準拠のCCA(キャリアセンス)といった機能を実現できる。CCAとは、決められたレベル以上の電力がアンテナから入力されている状態ではデータを送信しないように設定するモニタリング機能のこと。ARIB STD-T108で処理内容が規定されている。IEEE 802.15.4g対応のパケット生成/処理やCCAといった、従来は機器内のマイコン側で処理していた機能をRFトランシーバに搭載したことで、マイコンの負荷を減らすことができる。
ADIは、今後もIEEE 802.15.4gの無線システムを対象にした無線製品の拡充を続ける。例えば、既に開発が進行中の次世代チップでは、パワーアンプの高出力化や受信性能の向上に加えて、内蔵プロセッサの処理能力を高める。さらに、「物理層/MAC層のさらに上位層も含めたソリューション提供まで視野に入れ、包括的なソリューションを提供していく」(同社)という。
この他、無線ソフトウェアスタックの開発を手掛けるスカイリーネットワークスは、ECHONET Liteプロファイルに対応したホームネットワーク向けのプロトコルスタック「SK STACK IP 2.0」の正式版の提供を2012年夏に始める予定である。6LoWPANやRPL、IPv6、TCP/UDPといった、アダプテーション層からトランスポート層までのプロトコル処理を担当するスタックだ。特徴は、必要となるメモリが少なく、今、ZigBeeが動いているハードウェアでそのまま使えることだという。物理層について制限はないが、例えばWi-FiやIEEE 802.15.4、IEEE 802.15.4gなどを想定している。屋外の大規模なマルチホップ通信ネットワークを対象にしたプロトコルスタック「DECENTRA II」も提供している(関連記事:「ZigBeeより軽くてANT+より賢い」、組み込み向け無線プロトコルが新登場)。
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