2012年におけるモバイル機器向けDRAMの売上高は、2011年に比べて10%増加する見通しだという。汎用DRAMは売り上げ不振が続くも、モバイル機器向けDRAMの需要は、スマートフォンやタブレット端末の爆発的な普及に後押しされている。
米国の市場調査会社であるIHS iSuppliによると、2012年のモバイル機器向けDRAM市場は、スマートフォンやメディアタブレットなどのヒットを受け、2011年から10%増となる65億6000万米ドルを記録する見通しだという。
これに対し、汎用DRAM市場では、2012年の成長率は3%にとどまると予想される。
IHS iSuppliでメモリ/ストレージ部門担当アナリストを務めるRyan Chien氏は、報告書の中で、「モバイル機器向けOS、ストリーミングアプリケーション、ゲームでは、高度な機能を実行するために大容量のメモリが必要となることから、モバイル機器向けDRAM市場は大きく成長した。マルチタスクやメディアデコード、ファイル解凍、データ同期、バックグラウンド処理といったモバイル機器に必須となる機能には全てDRAMが必要となる。さらに、こうした機能を充実させるため、スマートフォンやタブレット端末のDRAMの搭載容量が増加傾向にあることも、DRAMの需要を押し上げる要因となっている」と述べている。
IHS iSuppliをはじめとする複数の企業のアナリストは、「Micron Technologyがエルピーダメモリを買収した一番の理由は、エルピーダメモリがモバイル機器向けDRAMに強いことだ」と分析している。
IHS iSuppliがモバイル機器向けDRAMに関する分解調査を実施した結果、次のようなことが明らかになったという。「ワイヤレス機器に搭載されるモバイル機器向けDRAMの平均容量は、増加傾向にある。スマートフォンが搭載するモバイル機器向けDRAMの容量は、2010年第2四半期は2.28Gビットだったが、2012年第2四半期は5.85Gビットに増加した。タブレット端末ではこの傾向がより顕著で、同じ期間に2Gビットから8.33Gビットと約4倍に急増している」。
一方、汎用DRAMの売上高は、2012年はPCの売り上げ不振により低迷する見通しだという。モバイル機器向けDRAMの平均販売価格(ASP:Average Selling Prices)は、他のメモリと同様に下落傾向にあるものの、需要が高く、供給ベースが小口であることや、搭載容量が増加していることなど、さまざまな要因によって、比較的安定した価格を維持している。
Micron Technologyとエルピーダメモリの両社は、2012年第1四半期のDRAM売上高には大きな差はなかった。しかし、モバイル機器向けDRAMの売上高は、エルピーダメモリが2億1800万米ドルで、Micron Technologyの2倍以上だった。
Chien氏は、「エルピーダメモリは財政的に破綻したにもかかわらず、2012年第1四半期のモバイル機器向けDRAM市場全体の売上高18億米ドルのうち、約20%近くのシェアを獲得している。今後2〜3年間に、モバイル機器向けDRAMはさらに普及すると予想される。Micron Technologyが25億米ドルで買収したエルピーダの資産のうち、モバイル機器向けDRAM分野は最も重要な要素となるだろう。とりわけ、Samsung ElectronicsやSK Hynixなど半導体市場のシェアを独占する韓国勢と勝負する上で、Micron Technologyにとって大きな武器となるはずだ」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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