ドイツは、“世界で最もスマートな都市”の実現に向けて取り組みを始めている。あらゆる建物に太陽電池を取り付けるなど、“自給自足”できる都市を作るべく、さまざまな分野の技術の統合を図っていく。
ドイツは2030年をメドに、“世界で最もスマートな都市”の実現を目指すという。エネルギー生産や公共交通機関、スマートヘルスケア、セキュリティなどさまざまな分野の統合に向けて、住宅や産業、政府機関などに資金を提供していく考えだ。化石燃料を使わずに済む自給自足を実現すべく、あらゆる建物の上に太陽電池を設置する計画を立てている。住宅やアパート、産業分野などにおいて、エネルギーを自給自足できるようにするだけでなく、スマート化がまだ不十分な周辺国に向けて余剰分を販売できるほどのエネルギーを積極的に生産していきたいとしている。
Berlin Partner for Business and Technologyのスマートシティ部門を率いるAlexander Moller氏は、「エネルギーを効率的に使用すれば、CO2排出量も削減できるようになる。2050年までには、“CO2排出量ゼロ”を目指したい。ただし、ここで重要な課題となるのが、自分たちが住む街をもっとスマートで素晴らしい場所にするという目標を達成するには、新しい技術をどのように統合していけばいいのかという点だ」と述べている。
そこでドイツでは、2015年中に、1100の研究機関と22の技術センター、50の新興企業インキュベータ(起業支援)などを対象として、15億ユーロ(約2085億円)の資金を提供する予定だとしている。必要に応じて、さらに資金の提供先を増やしていくという。
Moller氏は、「ベルリンでは現在、20時間に1社のペースで新興企業が設立されている」と述べる。
ベルリンでは、数千社に上る新興企業のうち、全体の3分の2もの企業が、Cisco SystemsやGE(General Electric)、Microsoftなどの外国資本からの資金提供を受けて、革新的な技術の研究に取り組んでいるという。
Ubitricityは、分散型エネルギーシステム社会の実現に向けて、電気自動車(EV)の販売を拡大すべく、ドイツ全土に向けて電気自動車用充電器をわずか250ユーロ(約3万4700円)で提供しているという。
ベルリンでは、新しい空港の完成後に、旧空港の跡地を再利用して、スマートシティモデル都市を実現する計画を立てているという。一般住宅としてのスマートハウスや、スマート工業団地などを組み合わせる予定だ。
Moller氏は、「われわれは、イスラエルのテルアビブをモデルとして、スマートシティや新興企業インキュベータの実現に向けて取り組んでいる」と述べる。同氏が所属するBerlin Partner for Business and Technologyは現在、ベルリン市議会や200社を超える企業との協業により、同市のスマート化に向けた取り組みを進めているさなかだ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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