これまでのところ、新興市場であるスティック型ストリーミングデバイス市場に参入しているのは、RokuとSigma Designsの2社だけである。ただし、「Sigma Designsは半導体ベンダーであるため、同社にとってスティック型ストリーミングデバイスは、実際に販売する製品の開発というよりも、リファレンスプラットフォームや、コンセプトの実証、スティック型ストリーミングデバイスをテレビなどに搭載するための検証といった側面が大きい」(iSuppliのSelburn氏)という。
中国のファブレス企業は、スティック型ストリーミングデバイス市場への参入に意欲を燃やしながらも、まだ表立った動きは見せていない。中国企業は、新しい製品が登場すると、一斉に同じ市場セグメントを狙うことがよくある。こうした傾向を考慮すると、「市場はすぐに、似たようなスティック型ストリーミングデバイスであふれ返るだろう」と筆者は確信している。だが、この製品の人気が、アジアを超えて広がるかどうかはまだ定かではない。
Selburn氏は、「STBは最終的に姿を消すのか」という質問に対し、「短中期的には、その可能性はない」と答えている。同氏は、その理由を「STB/OTTボックスとテレビの寿命の違いによるものだ」と説明している。「外付けデバイスを利用すれば、コストをかけず、簡単に数年ごとに機能をアップグレードすることができる。このため、テレビのハードウェアに全ての機能を搭載するよりも理にかなっている。スティック型ストリーミングデバイスを利用することで、消費者と通信事業者の双方が、アップグレードをより簡単に、かつ安価に行えるようになる」(同氏)。
コストを削減できることは、大きな利点である。RokuはStreaming Stickと同じアーキテクチャを適用したWi-Fiストリーミングメディアボックスを販売しているが、この製品を分解したところ、材料コストの大部分を、電源やプリント基板などが占めていることが判明した。このようにコストがかかる部品の多くは、スティック型ストリーミングデバイスには使われていないという。
Selburn氏は、「スティック型ストリーミングデバイスによって消費者が恩恵を受けることは明らかだ。インストールやアップグレードが格段に簡単になり、形状的にも優れている。さらに、ケーブルを買わなくても済むため、コストも削減できる」と付け加えた。
筆者は、こうしたスティック型ストリーミングデバイスは、特にテレビメーカーに深刻な影響を与えると考えている。スティック型ストリーミングデバイスが普及した場合、テレビメーカーは、自社の薄型テレビに新しい機能や価値を付与することが難しくなるのではないだろうか。
これは、収益性が低いテレビ事業に苦しんでいる多くの家電メーカーに、さらなるダメージを与えかねない。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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