富士通セミコンダクターは、ARMのCortex-Mシリーズを採用した32ビットマイコン群の拡充を発表した。高性能版と低消費電力版の2つのファミリを追加することで製品ラインアップを充実させ、海外での売上高の増加を図る。
ARMのCortex-Mシリーズを採用した32ビットマイコン群を拡充し、民生機器向けマイコンのグローバル展開を強化する――。富士通セミコンダクターは、2012年11月6日に開催した記者説明会でそのように発表した。
富士通セミコンダクターは2010年11月に、ARMのプロセッサコアCortex-M3を採用した32ビットマイコン製品群「FM3ファミリ」を発表し、これまでに463製品を投入している(関連記事:2012年度末までに500品種超を投入、富士通セミコンがARMマイコン強化を鮮明に)。今回は、Cortex-M4を採用した高性能版の「FM4ファミリ」と、Cortex-M0+を採用した低消費電力版の「FM0+ファミリ」の2つを追加する。FM4ファミリは産業機器、FM0+ファミリは電池駆動の機器やセンサー機器の用途に向ける。
富士通セミコンダクターは、オリジナルのコアを搭載したマイコン製品群も持っており、こちらは主に日本国内の顧客に向けて販売してきた。だが、海外の顧客にマイコンの性能をアピールするには、グローバルに普及しているARM製コアを採用する方が理解を得やすいという。
マイコンソリューション事業本部でマイコン事業本部長を務める寺本俊幸氏は、「現在、当社の民生機器向けマイコンにおける海外売上高比率は約20%である。Cortex-Mシリーズを採用した製品を拡充することで、この比率を今後3年間で50%に引き上げることを狙う」と述べる。
ARM製コアを搭載したマイコンを販売する競合他社とは、「製品ラインアップの豊富さや、タイマーやインタフェースといった周辺回路の性能、およびサポートで差別化を図っていく」(寺本氏)という。
なお、産業用途を狙うのであれば、Cortex-Mシリーズよりも演算処理能力が高いCortex-Aシリーズを採用することも考えられるが、これについては、「演算よりも制御としての用途を狙っているので、Cortex-Aではなく、Cortex-Mシリーズを今後も使っていく」(同氏)と説明した。
DSPとFPU(浮動小数点演算ユニット)を搭載するCortex-M4を採用したFM4ファミリは、従来品であるFM3ファミリの高性能版に比べて、約4倍の処理性能を実現しているという。最大動作周波数は160MHz(200MIPS以上)で、サンプリング速度が2Mサンプル/秒のA-Dコンバータを搭載している。FM3ファミリではカバーしきれなかった、FAやインバータなどの産業機器向けのモーター制御、ネットワーク制御の用途を想定している。白物家電やAV機器を主なターゲットとしているのがFM3ファミリだが、顧客からは「もう少し処理性能の向上を」という声もあったという。FM4ファミリは、2013年度末までに80製品を投入する予定だ。
Cortex-M0+を搭載するFM0+ファミリでは、電池駆動の機器やセンサー機器など、低消費電力が求められる用途を狙う。最大動作周波数は40MHz。消費電流は動作時で70μA/MHz、待機時で0.7μAを目指すとしている。2013年度末までに、50製品を発表する予定となっている。
寺本氏は、「FM3、FM4、FM0+の3ファミリで合計700製品を取りそろえることになる。幅広い用途に対応できるこの製品ラインアップを武器に、グローバルにビジネスを展開していく」と強調した。
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