NHKと民放各社は「CEATEC JAPAN 2013」(2013年10月1日〜5日、幕張メッセ)で、テレビ放送と通信を連携させたサービスであるハイブリッドキャストのデモンストレーションを行った。データ放送と明確に差別化し、視聴者が「これは便利」と思えるようなサービスを提供できるかどうかが、普及の鍵になりそうだ。
「CEATEC JAPAN 2013」のNHK/JEITA(電子情報技術産業協会)ブースで、来場者の注目を集めていたデモンストレーションの1つが、ハイブリッドキャストだ。
ハイブリッドキャストとは、「電波で送られる放送番組とネットワーク経由のコンテンツを、受信機(テレビ)で同期して合成し、表示する」というもの。NHK放送技術研究所が開発し、一般社団法人であるIPTVフォーラムがそれを基に規格化を進めてきた。2013年3月に標準規格化されている。2013年9月2日にはNHKがサービスを開始、民放各社は2014年4月以降のサービス開始を目指している。
ハイブリッドキャストを利用するには、ハイブリッドキャスト対応のテレビが必要になる。現時点で製品化しているのは東芝のみで、パナソニックも10月中旬に市場に投入する予定だ。テレビをインターネットにつなぎ、リモコンの「d」ボタンを押すと、ネットワーク経由で配信されたコンテンツ(以下、ハイブリッドキャストのコンテンツ)が放送画面にかぶさるように表示される。なお、ハイブリッドキャストのコンテンツの表示は、HTML 5で記述されている。
現在NHKが提供しているハイブリッドキャストのコンテンツは、ニュースや気象情報など、データ放送に近いものだ。だが、電波の“隙間”を使って送信するデータ放送とは異なり、通信用のネットワークを使うので、容量の大きなデータを送信することができる。そのため、データ放送よりも充実した豊富なコンテンツを提供できると各局は期待している。CEATECでは、テレビとタブレット端末をWi-Fiルーターに接続して連携し、タブレット端末をうまく利用したデモが多く見られた。
NHKは、「ハイブリッドキャストは始まったばかりなので、今はどのようなサービスがあればいいのかを探っている段階だ」と述べる。ハイブリッドキャストの普及には、データ放送との明確な差異化が欠かせない。視聴者を「データ放送よりも明らかに有益だ」と納得させることができれば、ハイブリッドキャストのコンテンツのみを専門に提供する企業が出てくるなど、新しいビジネスチャンスを生む可能性も高い。
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