またSamueli氏は、EE Timesのインタビューに応じ、現在の状況について詳細を語った。
「ムーアの法則が全ての道筋を示すという認識は、確実に弱くなっている。このような見解について、全面的な合意を得たわけではないが、これまでに確認したあらゆるデータを見れば明白な事実であることが分かる。さらに重要なのが、28nm以降のプロセス技術では、性能当たりのコストが増加していくという点だ。従来は性能と消費電力、コストの全てにおいて優位性を確保することができたが、今後は性能と消費電力の面でメリットを得られても、コストの面では得られなくなるだろう。次世代プロセス技術への移行に関しては、熟考する必要があるといえる」(同氏)。
Samueli氏は、「28nmプロセス技術は今後、長く続いていくだろう。最終的には28nmプロセス技術が最も低コストで済む技術になると思われる」と述べる。
Broadcomは2013年12月、同社のネットワークプロセッサ「XLP」において、新しいマルチコアプロセッサアーキテクチャを発表した(関連記事:「MIPSを捨てた、というわけではない」 Broadcom、ARMベースの64ビットSoCを説明)。新アーキテクチャは、20nmプロセスをスキップし、16nmプロセスのFinFET製造技術を採用している。
10nmプロセスで物理的な限界が直前に迫っても、まだいくつか移行するとみられる。「7nmから5nmへの移行で微細化の限界にほぼ到達すると考えられる。この時、トランジスタのゲートに存在するシリコン原子の数は、わずか10個程度になるだろう」(同氏)。
IEDMの別の基調講演では、学術研究者たちが、既存のCMOSプロセス技術を置き換える技術として、グラフェンによるギガヘルツクラスのトランジスタの開発状況についてリポートを発表している。それによると、たとえ技術開発が進んだとしても、既存の問題を解決して実用化に至るのは難しいという。
ただし同リポートは、「グラフェンは、厚みがわずか原子1個分であることから、最終的に微細化が限界に到達する段階で、最先端のシリコン半導体やIII-V族半導体による高周波トランジスタを超える可能性を秘めている」としている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.