筆者がAmazonの事業戦略にあまり関心を持てない理由を述べたいと思う。勘違いしないでいただきたいのだが、Fire Phoneを使えばショッピングが便利になるのは理解できる。探している物に関する情報の取得から、買うか買わないかの意思決定まで、ショッピングに関する全ての工程をスマートフォン1つでできるからだ。だが個人的には、「Amazonの狙いは、Fire Phoneを24時間いつでもショッピングができる携帯用スキャナーとして普及させることだ」と筆者は感じている。
Fire Phoneは、何でも買える魔法の杖のようにも思えるが、果たしてそうだろうか。ショッピング用のスキャナーとしての機能に特化したスマートフォンを“進歩”としては認め難い。Fire Phoneは常に、ユーザーの周りにある物を商取引の対象として見せる。筆者はショッピングが好きだが、ショッピングのために生きているわけではないし、スマートフォンをショッピングの道具にしたいとも思わない。
Google Playがインストールされていないことも、Fire Phoneの大きなマイナス面だ。IHS TechnologyのFogg氏は「Fire Phoneには、ユーザーがスマートフォンに求める重要なGoogleアプリが搭載されていない」と指摘している。つまり、「AndroidスマートフォンのユーザーがFire Phoneに乗り換えた場合、それまで使っていたアプリが使えなくなってしまう」(同氏)。これは、大きなデメリットだ。
さらにもう1つ。世の中に存在する物は、1億点では済まないのではないだろうか。Fogg氏は「もちろん、1億点というのはほんの一部だ」と答えている。同様の機能は「Google Goggles」などのアプリで登場している。これらの似たようなアプリがFire Phoneの競合になるのかどうかは、まだ分からない。
以上のことから、筆者は究極のショッピングツールはアプリとして用意されるべきであって、ハードウェア(スマートフォン)として用意されるべきではないと考えている。ショッピングツールは単なるアプリであり、しかも最も重要なアプリではない。
確かに、Envisioneering GroupのDoherty氏が筆者に述べた通り、Amazonは信頼できるサービスを提供している企業だろう。だが、1種類のキャリア(AT&T)と、1種類のオンラインストア(Amazon)にしか対応していないスマートフォンを、199米ドル(32Gバイト版)を出して購入したいと思うだろうか。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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