決断までに永久かと思われるほどの時間が掛かり、何か新しく異なったことを行う時には尻込みし、そして何よりもリスクを負うことを嫌う。そうした日本企業と共同したことがあるならば、メガチップスとの協業はこの上なく好ましく感じられることだろう。この点が同社を理解する第1の鍵だ。
メガチップスは今なお創業者たちの経営下にあるが、決断力、実行力、思考の自主独立性、企業家的情熱など、日本のIDMの経営幹部にはあまり見られない特質を持っている。メガチップスが直近の18カ月間に多くの企業と取引した際の類まれな迅速さを見れば分かるだろう。
日本の多くのチップベンダーが再編成、コスト削減、縮小思考に焦点を合わせている時に、断固として攻めの成長を追求する日本企業は新鮮であり、爽快だ。
2013年4月以降、メガチップスは派手な買い物をしている。
例えば、2013年4月に連結子会社だった川崎マイクロエレクトロニクスを吸収合併し、2014年2月には、STMicroelectronicsからDisplayPort関連製品事業を買収。さらに同年4月には、米国のアナログ、ミックスドシグナル回路IPベンダーであるVidatronicに出資し電源IC市場に参入した他、民生用半導体ベンダーの台湾Modiotek(京宏科技)に出資してグループ会社化している。
さらに、メガチップスの台湾子会社(MegaChips Taiwan Corporation)は、台湾に本社を置くModiotekの発行株式の大半を取得して子会社化することを発表した。
2014年10月には、MEMS発振子分野の最大手企業である米SiTimeの買収を発表。高田氏は、「この買収は、メガチップスの新時代に向けての変革の展望を完成させる」と語っている。
高田氏は、最近のM&Aを主導しただけでなく、会社を新しい路線に導くための地味な手も打ってきた。「私がメガチップスの社長に就任した3年前は、従業員数は275人、海外売上高は全体の1/4だった。現在は、従業員数が3倍、売上高が2倍になり、売り上げの40%以上が日本以外からになった」(同氏)。
しかしながら、メガチップスの意欲的なM&Aが成功すると予言するのは難しい。結局、同社の戦略(カスタムASICからASSPへの転換)は、日本メーカーの状況から必要にかられて構築されたものだ。日本以外のアジア諸国におけるシステムメーカーの増加に比べて、日本のシステムメーカーがますます少なくなり、弱体化しそうだという状況である。
メガチップスは、日本の顧客は日本のチップメーカーとの共同を好むという国内環境の中で成長してきたので、グローバルな成長を目指す計画への急速に転換するための準備ができていないのではないか、と心配する向きもある。
さらに、最近のメガチップスの投資は広範囲に及んでいて、それらの中には目の前の利益につられたように見えるものもあり、それら全てを貫く買収のテーマが判然としない。
高田氏は、これには同意しなかった。それぞれの買収や資本投資はメガチップスがグローバル化し、新技術と新製品の競争力を上げるうえで決定的な役割を果たす、と同氏は主張する。
川崎マイクロエレクトロニクスを買収したことで、メガチップスは、表向きにはフルサービスを提供できるチップベンダーになった。メガチップスは、画像処理や通信の分野にも強いことから、日本人の情報筋は「メガチップスは、“ターンキー”チップメーカーとは何かを理解した、日本最初のチップメーカーとなった」と述べている。同氏の見るところでは、顧客であるシステム企業にチップからソフトウェア、さらにアプリケーションまでを提供するMediaTek同様、メガチップスも念入りな顧客サポートを提供することで知られているという。
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