情報通信研究機構や住友電気工業などは2015年3月、36コア全てがマルチモード伝搬の新型光ファイバーを開発し、光信号の送受信実験に成功した。
情報通信研究機構(以下、NICT)と住友電気工業(以下、住友電工)、横浜国立大学、オプトクエストの4者は2015年3月、共同で36コア全てがマルチモード伝搬の新型光ファイバーを開発し、光信号の送受信実験に成功したと発表した。36コアを全て3モードにして、1本の光ファイバーで108の空間チャンネルを実現し、「実験の成功によって、1本の光ファイバーで10ペタビット/秒(bps)級の超大容量伝送の可能性をひらいた」(4者)としている。
光ファイバーの伝送容量を増やす技術として、複数の光の通り道(コア)を配置したマルチコアファイバーや、コア径を広げて1つのコアで複数の伝搬モードに対応したマルチモードファイバーの開発が進められている。また、これらの新型光ファイバーの実用化には、従来のシングルコア、シングルモードの光ファイバーと接続するデバイスの開発も不可欠といわれている。
NICTはこれまでに、マルチコアファイバーとして、19コアシングルモードファイバーを開発していたが、今回、開発した光ファイバーはそれを大きく上回る36コアのマルチコアファイバーで、なおかつ、各コアは3モード伝搬に対応した。結果、108(36コア×3モード)の空間チャンネルを設けた直径0.3mmの光ファイバーで、通信波長帯の光信号を送受信させることに成功した。
送受信の実験には、新たに開発した「既存の光ファイバーと接続する空間結合装置」を用いた。同装置は、従来、マルチコアシングルモードファイバー用に開発した装置に、伝搬モードの異なる光信号を合波する機能を追加したもので、1台の装置でマルチコアとマルチモードに対応させた。
なお、36コアマルチモードファイバーは、横浜国大と住友電工が共同で設計し、住友電工が製造を行った。またNICTとオプトクエストは、既存の光ファイバーと接続する空間結合装置を共同設計し、オプトクエストが製造したという。
今回の実験の成功を受け4者は、108空間チャンネル全てに最先端光変復調技術やデジタル信号処理技術を利用すると、1本の光ファイバーで10ペタbps急の超大容量伝送の可能性がひらき、今後、より安価で大容量のネットワークサービスの実現が期待できる」としている。なお4者は、開発した新型光ファイバー技術の実用化を目指し、通信事業者や通信機器メーカーとの取り組みを積極的に推進する他、さらなる大容量化技術の研究開発に取り組むとしている。
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