回路図とマスクパターンの間に存在するパラメータは、大きく分けると4つある。1つは、(1)pMOSトランジスタのベータ値とnMOSトランジスタのベータ値の比率(ベータ比[Beta Ratio])である。もう1つは、(2)トランジスタの電流駆動能力(ドライブ強度[Drive Strength])だ。3番目は、(3)トランジスタのしきい電圧(VTH)である。最後は、(4)ゲート長(LGATE)だ。
(1)でベータ比が1のときは電源電圧の半分の入力電圧が、スイッチング電圧になる。ベータ比が1を超えていく、つまり、pMOSのベータが相対的に大きくなるときは、スイッチング電圧は上昇する。反対にベータ比が1から下がっていく、つまり、nMOSのベータが相対的に大きくなるときは、スイッチング電圧は下降する。
(2)で電流駆動能力を上げるための基本的な方法は、ゲート幅を広げることである。ただしゲート幅を広げると、ゲートの静電容量が増加し、前段のトランジスタから見た負荷容量が増える。
(3)で電源電圧が同一の場合、しきい電圧と電源電圧の差によって電流駆動能力が決まる。つまり、しきい電圧が低いと電流が増加する。ただし、しきい電圧を下げるとリーク電流が増加し、待機時消費電力の増大を招く。
(4)でゲート長を短くすると、トランジスタのゲート幅当たりの電流駆動能力が増加する。ただしゲート長を短くするとセルレイアウト全体の単位寸法(ゲートピッチ)が短くなるとともに、製造が難しくなる。
論理ゲートやフリップフロップ、バッファなどのスタンダードセルは、これら4つのパラメータの違いにより、レイアウトの異なる数多くの派生品を生み出す。1個のセルライブラリ(同じ高さのセル群によるライブラリ)は、おおよそ1300個〜1500個と数多くのセルで構成されているという。
(次回に続く)
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