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EtherCAT通信の仕組みを知ろう〜メイドは超一流のスナイパー!?江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(2)(4/8 ページ)

» 2015年05月29日 09時00分 公開
[江端智一EE Times Japan]

流れているイーサネットフレームを見てみる

 では、EtherCATスレーブ3台(GX MD-1611)を用いて、実際に流れているイーサネットフレームを見てみましょう。

 こちらが稼働中の動画になります。


オムロン「GX MD-1611」が動作している様子

 下記が、ネットワークアナライザ「Wireshark」でキャプチャした、イーサネット上のフレームの内容です(一周してマスタに戻ってきたフレームです)。

photo

 このフレームは、マスタが、3つのスレーブのLEDを点滅するように指示したものになります。マスタは、3つのスレーブに対して、同じ命令「点(1) 点(1) 消(0) 消(0)消(0) 消(0) 消(0) 消(0) = 1100 0000 = &0c00」を出しています。

 今回は、4つのパターンを切り替えて、LEDを点滅させています。

 このように、実際にスレーブに制御データを送って、制御システムを稼働させる通信を、プロセスデータオブジェクト(Process Data Object:PDO)通信と言います。

 ちなみに、EtherCATのPDO通信は、とても「せわしない」です。マスタは、毎秒100〜1000個のフレームを流し続けるのです。

 例えば、上述したLEDの点滅の制御を例に取りますと、LEDを点滅させない時でも、マスタは、同じ内容のフレームを送信しています。

 ―― なんと、無駄なことを……。

 LEDのパターンを変化させる時だけ、PDO通信すればよさそうなものです。EtherCATスレーブをつないだイーサネットのハブのLEDがすごい勢いで点滅しているのを見ると、「電気がもったいない」という気持ちになってきます。

 しかし、この「せわしない」通信こそが、EtherCATを含む、制御LANの最大の強みなのです。

 例えば、通信不良が発生した時(雷による瞬時停電など)や、スレーブが目標時間内に制御を完了できなかった時(過重量によるロボットアームの動作遅延など)でも、その直後に同じ制御データがやってくるので、安心です。

 EtherCATのPDO通信は、TCP/IP通信とは異なり、スレーブは、フレームが到着したことを、いちいちマスタに報告したりしません。

ワシは難しいことはよう分からん。じゃけん、不安なら100回でも、同じこと繰り返せば、ええんじゃろう?

 この、ヤクザ映画に登場する、物事を深く考えない古いタイプの親分の考え方こそが、EtherCATの超高速のリアルタイム通信と、抜群の通信信頼性を担保しているのです(そりゃ、同じことを100回行って、全て失敗するのは確かに難しいですよね)。

 以上が、制御データの通信、「プロセスデータオブジェクト(Process Data Object:PDO)通信」の概要になります。

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