EETJ 通信機器以外の用途でシェアを伸ばせた理由は?
ローガン氏 FPGAは過去、試作のためのデバイスだった。しかし、昨今では、ASICの開発コスト増大に伴い、ASICの代替となるデバイスとして、ASSPやMCUとともに、FPGAが利用されるようになった。特に、低遅延、リアルタイム性が要求される車載機器であったり、医療機器であったりという用途でFPGAが支持されてきた。
それに伴い、FPGAに求められるニーズは変化した。試作用途でFPGAに求められた要求は、機能、性能の順。コスト、消費電力は二の次だった。これが最終製品に搭載されることになって、消費電力、コスト、性能、機能という全く逆の順序に変わった。そうしたニーズに対応できた点が、われわれの強みだ。
消費電力では最新プロセス技術を駆使し、静的、動的、双方の消費電力が下げられた。コストでは、システムレベルのコスト低減が提供できている。また、回路構成を動的に変えることで、チップサイズの小さい(すなわち低価格な)FPGAが使用できるようになるパーシャルリコンフィギュレーション技術などの提供もコストニーズに応えた一例だ。パーシャルリコンフィギュレーション技術を活用したFPGAの利用法は主流といえるほど、ユーザーに定着している。
EETJ 製品としては、28nmプロセス世代の「7シリーズ」が好調のようですね。
ローガン氏 先日発表した通り、28nm世代品の累計売上高が10億米ドルを突破した。これは過去のどのプロセス世代品よりも10カ月以上速いペースでの達成だ。実際、それまでの世代と比べて28nm世代品は数倍の勢いでビジネスが立ち上がった。
2014年末には、28nm世代に続く、20nm世代品を投入した。より大きな回路規模を誇り、成熟した開発ツールである「Vivado Design Suite」を使用できる製品。さらに特長である高速トランシーバも確実に動作するよう仕上がっており、28nm世代同様のビジネス立ち上がりとなっている。
EETJ 2015年末には16nm世代品を投入予定です。
ローガン氏 予定通り、製品を投入できるだろう。ただ、これまでと違い、新しいプロセス世代の製品を投入した後も、それまでの世代の製品でも、新製品を投入していく。具体的には、16nm世代製品も投入するが並行して、20nm世代品、28nm世代品でも新たな価値を付加した新製品を投入する。こうした試みは、FPGA業界初であり、楽しみな部分だ。
EETJ 開発ツールでは、2011年のAutoESLの買収などを契機に、C、C++など高位言語での開発環境整備に注力されています。
ローガン氏 先ほども話した通り、経済的な理由で、FPGAを選択するユーザーは増えている。しかしながら、RTL言語を使いこなせるエンジニアは多くない。半導体の中でFPGAは、デバイス内部の回路設計もしなければならない、最も取り扱いの難しいデバイスだ。その点が、現状のFPGAの課題だと考えている。
高位合成(HLS)ツールの性能も随分と改善し利用は増えてきているが、さらに(高位言語設計に対応する)ツール開発や、エンジニアの教育支援を強化していきたいと思っている。
EETJ 今期、2016年3月期以降のビジネスの見通しをお聞かせください。
ローガン氏 10%増に迫る過去5年の年平均売上高成長率を維持していくのは、徐々に難しくなってきている。しかし、車載機器や産業機器、医療機器といった分野向けのビジネスは底堅く、緩やかながら堅く伸びていく見通しだ。加えて、国内は、2020年の東京五輪に向けて、さまざまな開発が加速しており、市場自体も盛り上がっていくだろう。そうした中で、われわれも、一定のビジネス拡大を目指していく。
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