業界内では、2018年の冬季オリンピックまでに5Gを規格化することは間に合わないだろうという見方もある。そのため、少なくとも韓国は独自の規格を使い、ある程度“見切り発車”で進めるだろうといわれている。
2018年の時点では、大まかな方向性は決まっていても、細かい部分では、まだ決まっていないところも多いと考えられる。そこを韓国が独自の規格で補い、5Gのトライアルを展開するだろうという意味だ。だが当然、商用サービスでは独自の規格は使えない。
このようにスケジュールはギリギリだが、業界の動きは着実に加速しつつある。2015年には7月22日には、NTTドコモが、5Gに向けた実験協力で新たに5社を追加したと発表した*)。ここで注目したいのは、NTTドコモのパートナーはこれまで通信機器メーカーが中心だったものが、今回追加した5社は、Intelなどのデバイスメーカー、キーサイト・テクノロジーなどの計測器メーカーが中心となっているところだ。複数の業界や分野を横断しており、5Gの実用化を何とか間に合わせたいとする様子がうかがえる。
*)関連記事:ドコモ、5Gに向けた実験協力で新たに5社を追加
現在、5Gはマイクロ波からミリ波まで複数の周波数帯で研究が進められているが、北野氏によれば、2020年の商用サービスでは、時間の問題で6GHz以下の周波数帯を使用することになりそうだという。それ以上の周波数帯としては、Ericssonが15GHz帯、Nokia Networksが73GHz帯、Samsung Electronicsが28GHz帯を使って研究開発を進めている。
使用周波数 | 変調帯域幅 | 測定に必要なチャンネル数 | 変調方式 | |
---|---|---|---|---|
〜6GHz | 〜160MHz程度 | 多チャンネル | LTEベースなど | |
10GHz〜50GHz | 〜1GHz程度 | 多チャンネル | 独自のOFDMなど | |
60GHz〜90GHz | 〜2GHz程度 | 1チャンネル | QAMなど | |
キーサイト・テクノロジーの講演資料を基に筆者が書き起こした |
北野氏は、「(3Gの方式の1つである)W-CDMAでは、まず使う周波数を決めた。そして、その周波数でどのように電波が伝搬するのかを実証実験し、それが済んでから規格化を行った。その後、商品開発に入った」と説明する。本来は、W-CDMAのように順序立てて規格化を進めていくのが理想だが、5Gにはもはやそのような時間はない。そのため、実証実験と規格化、商品開発の3つを並行して行わなくてはいけないという状況になっている。通信機器開発メーカーでは、どの周波数帯を使うことになっても、即座に対応できなくてはならない。
それ故、5Gの研究開発においては、計測器の役割がこれまで以上に重要になっているという。測定器にダウンロードするソフトウェアを変えることで、さまざまな周波数や変調方式に対応できるようになり、早い段階で試作品(装置)の評価を検証できるようになる。
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