Hyundai Motorの下肢用パワードスーツと、HTICのARTSENSは、両方とも単なる機器ではなく、大量のデータを収集して、それをリハビリや治療、疾病予防などに生かそうとしている。上記2つの例では、機器自体が“データ収集装置”の役割も同時に果たすことで、医療そのものの進歩にも役立つ可能性がある。IoT技術と組み合わせることで、医療・福祉機器が単に「測るだけ」「使うだけ」のものではなくなることを予感させるデモだった。
もう1つ、大きな関心が集まったのが、スイスのETH Zürich(チューリッヒ工科大学)の大学生たちが開発した電動車いす「Scalevo」である。この車いすの最大の特長は、「階段を上る」ことだ。説明するよりも、同大学が公開している動画を見ていただく方が早い。Scalevoが階段を上っていく様子は圧巻である。
Scalevoは、NIが教育用として提供している「NI myRIO*)」を用いて開発された。開発チームは、1年もかからずにScalevoを開発したという。
*)関連記事:ポケットにFPGA搭載の計測器を、学生実験を一新するアプローチ
Scalevoには、角速度センサー(ジャイロセンサー)やローテーションセンサーなどが搭載されている。これらのセンサーとアルゴリズムによって、Scalevoに乗った時にバランスが自動的に取れるようになっている。ちょうど「セグウェイ」のようなイメージだ。階段を上っている時にはレーザーセンサーで周囲を検知し、階段を上り終えたタイミングで補助車輪が出るようになっている(動画の2分10秒付近)。階段から滑り落ちないようにするためだ。搭載しているバッテリの容量は20AHr。稼働時間は使用状況によって変わるようだが、「動作検証のために、1日中、乗り降りしても問題なく動いていた」(ETH Zürich)という。
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