ここからRenwick氏は、もう1つの課題である「製造コストの急増」に話題を転じた。10nm世代以降の半導体デバイスを量産するリソグラフィ技術では、ArF液浸露光のマルチパターニング技術が必須である。一方、EUV露光ではシングルパターニングで量産が可能だ。
Renwick氏は、200ウエハー/時間のスループットを前提条件に、リソグラフィ工程の製造コストを計算した。一連の工程は、コーティング(レジスト塗布)、露光、現像、エッチングである。ArF液浸露光のシングルパターニングでは、200ウエハー/時間のスループットを備えるハードウェア・ツール群がワンセット必要となる。そしてダブルパターニングでは、ハードウェア・ツール群を2セット用意する。
EUV露光装置は、スループットがまだ低い。ここでは40ウエハー/時間のスループットを備えるハードウェア・ツール群を仮定した。200ウエハー/時間のスループットを達成するためには、5セットのハードウェア・ツール群が必要になる。
以上の前提で製造コストを計算した。製造コストの要因は、マスク、減価償却、ケミカル、ユーティリティ、コンストラクト、レイバー(作業員)、フロアなどである。計算対象のリソグラフィ工程は、「ArF液浸のカットマスク併用自己整合ダブルパターニング(SADP)」、「ArF液浸のトリプルパターニング(LELELE)」、「EUVのシングルパターニング(SP)」、「ArF液浸SADPとEUVカットの併用」、「ArF液浸SADPと電子ビーム・カットの併用(参考値)」の5種類とした。
コストの値は、ArF液浸のカットマスク併用によるSADP技術のコストを「1.0」と定義し、その他のリソグラフィ技術によるコストは相対値で示した。
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