これに対しChadha氏は、「Binatoneは、たくさんの単体製品を作るためだけにIoT市場に乗り込もうとしているのではない。当社が関心を持っているのは、エンドツーエンドプラットフォームでの製品活用だ」と説明する。同氏は、Binatoneを「56年分の資産を持つ新興企業」と表現する。
Binatoneは、さまざまな種類の小型コネクテッドデバイスが効果的な役割を果たせるようなIoTプラットフォームの構築に取り組んでいる。世界的なIoTサービスプロバイダであるHubble Connected(以下、Hubble)がサポートを提供するという。Hubbleは、グローバル規模のセルラーコネクティビティを安価に提供することができる。Chadha氏は、もちろん偶然ではないがHubble Connectedのエグゼクティブチェアマンを務める。同氏は、「特に、ライブの動画ストリーミングやクラウドレコーディング、GPS追跡システムなどといったIoTエンドデバイスに必要なものを、確実に提供できるようになる」と述べる。
さらにBinatoneは、同社の製品ポートフォリオとは無関係と思われる、「赤ちゃん」「ペット」「家族」という3つの主要な分野において、幅広い製品ポートフォリオを確立しようとしている。
当然ながらどの企業も、自社のIoT製品を、“ユーザーの手間を省き、より簡単かつ便利な生活を実現できる機器”として販売促進に努めている。
しかしChadha氏は、「家庭生活における感情的な側面に焦点を定め、ユーザーの感情体験を向上させるためにIoTを利用してはどうだろうか」と考えた。つまり同氏は、ユーザーが既に共有しているつながりを一段と高めるために、IoTを使おうというのだ。
このような考えは、筆者にとって実に新鮮だった。というのも、IoTに関しては常々、「なぜモノを接続する必要があるのだろうか。多少は便利かもしれないが大きな違いがあるとは思えないような機能を使うために、わざわざ大金を投じようと思うだろうか」という疑問を抱いていたためだ。
筆者としては個人的に、照明の点灯/消灯をスマートフォンで遠隔操作できるようにするために進んで投資しようとする人を見たことがない。実際に自分も、家の中の電球をすべて交換してまで、“スマート照明”を設置したことを友人たちに見せたいとは思わない。読者の皆さんはどうだろうか。
一方で、親になったばかりの人や、ペットを飼っている人、高齢者の介護に携わっている人など、愛する家族との感情的なつながりを大切にしたい人たちにとっては、いつでもどこでもつながることができるという技術は、いくら支払ってでも手に入れたい価値あるものではないだろうか。
筆者が住んでいるマンションには、働き盛りの若者でイヌを飼っている人たちが多い。こうしたペットたちは、家の中で一日中留守番をしている。このため、飼い主たちは、ペットの様子を確認できるような小型のペット用カメラがあれば歓迎するではないだろうか。例えば、「エサをどれくらい食べているだろうか」「どのくらい動き回っているだろうか」「部屋に閉じ込められてストレスがたまり、この前のようにソファを壊そうとしていないだろう」といったことを確認できるのだ。
こうした考えは、言うまでもなく赤ちゃんや高齢者にも当てはまるだろう。親たちは皆、眠っている新生児の動きを全て確認したいだろうし、年老いた親たちが無事に暮らしているかどうかを、誰もが気にかけている。
もちろん、このようなコネクテッドデバイスは既に、数多く市場に投入されている。
そこでBinatoneは、プラットフォームを提供することで、そうした既存の製品とは差異化を図ろうとしている。中心に据えているのはHubbleのテクノロジーだ。加えてMotorolaのライセンスなどを組み合わせて、赤ちゃん、ペットをモニタリングするカメラや通信端末を全てプラットフォームとして提供するのである。ちなみに、Hubbleは、Qualcommなどが参画するIoT向け標準化団体「AllSeen Alliance」のメンバーでもある。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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