NVIDIAは、産業用機器に向けたディープラーニング(深層学習)技術の開発において、Preferred Networksと技術提携をすると発表した。自社の高性能な演算処理能力を持つGPUを用いることで、ディープラーニングの可能性を最大限に広げていくとしている。
NVIDIAは2015年9月、産業用機器に向けたディープラーニング(深層学習)技術の開発において、Preferred Networks(以下、PFN)と技術提携をすると発表した。PFNは、産業用ロボット、自動運転や創薬の分野において、ディープラーニングを中心とした分散型機械学習の技術を持つ会社である。NVIDIAは、自社のGPUをPFNの技術に用いることで、ディープラーニングの可能性を最大限に広げていくとしている。
「ディープラーニングは世界を変える」と、NVIDIA日本代表兼米国本社副社長の大崎真考氏は語る。ディープラーニングは、画像、音声、センサーなどから得られるビッグデータから機械自身が学習するといった技術である。音声や画像などの認識技術、産業機器、自動運転車などにおいて応用が期待されている。Googleや中国のBaiduなどが活用していることもあり、その注目度が高まっている。
例えば、画像認識は、認識アルゴリズムが対象物によって異なっていた。ディープラーニングは、画像の特徴抽出から学習までを1つのネットワークで行うことで、属性まで認識することができるという。自動車の画像認識でいうと、スポーツカーやパトカーといったような属性の認識まで可能になるのだ。
ディープラーニングのようにしっかりと確立されていない技術は、研究開発のサイクルをいかに速く回すかが重要になる。特に、ディープラーニングではニューラルネットワークが多層化して多くの物体を認識させるため、機械が学習するのに多くの時間がかかる。
そこで、活用されるのが高性能な演算処理能力を持つNVIDIAのGPUだ。ディープラーニングの学習システムにおいて、「GPUが1日当たりにトレーニングできる画像の数は、16コアCPUより10倍以上多い4300万枚である」(NVIDIA)という。
NVIDIAは、GPU以外にもディープラーニング開発向けのライブラリを展開。データ入力やニューラルネットワークの構築をサポートする「DIGITS」や、ニューラルネットワーク開発用の「CUDA」などがある。このようにGPUとディープラーニング専用のライブラリを利用することで、研究開発のサイクルを速く回すことが可能になるという。
NVIDIAは、フレームワークやアプリケーションの開発は行っていない。そこで、今回PFNとの技術提携を行ったという。PFNは、ディープラーニングのフレームワーク「Chainer」を開発しており、学習システムにおいてNVIDIAのGPUを活用している。今回の技術提携によって、NVIDIAはPFNからフィードバックをもらうことでGPUの性能を向上させ、Chainerの性能をさらに強化していくとしている。
大崎氏は、「PFNは、ディープラーニングのフレームワーク『Chainer』を開発しており、NVIDIA米国本社でも注目していることから今回の提携に至った。今回の協業で、ディープラーニングの新たなアプリケーションが数多く生み出されるだろう」と語る。
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