World Global Networkが開発したスマートフォンでは、例えば通話の際に、セルラーネットワークから、独自の免許不要の5GHz帯ネットワークに移行することを目指している。同社は「mCell 5GHz」という独自のネットワーク技術を開発している。同社が推進しているプロジェクト「mCell 5G Beta」では、IEEE 802.11uとHotspot 2.0を採用し、LTE-U(アンライセンス周波数帯を活用したLTE通信)を用いてmCell 5GHzを実装する計画だという。
ユーザーは、「Space Station」を購入する。これは、Wi-Fiを介してスマートフォン接続を行うためのホームベースステーションの機能を果たす。通信料は月額12米ドルの設定だが、mCell 5GHzを使うトラフィックの量によって、通信料を割り引くとしている。
こうしたWi-Fiサービスは、既存のセルラーサービスを混乱させる可能性がある。LTE-Uを推進するメンバーと、Wi-Fi Allianceは以前から対立してきた*)。2020年以降に、5G(第5世代移動通信)ネットワークの普及が始まれば、混乱はさらに深まるだろう。5Gでは、さらに多くのアンライセンス周波数帯を使う可能性があるからだ。
*)関連記事:アンライセンス周波数帯をめぐる対立、深まる溝
既存の通信事業者(キャリア)は、従来のネットワークと並行してWi-Fiを後押しすることで対応している。キャリアはWi-Fiを新たな市場機会としてだけでなく、ここ数年で膨れ上がったトラフィックを分散する手段としてもみている。
例えば、AT&Tは2015年初め、セルラーネットワークと成長するWi-Fiネットワークに向けて新たなアプリケーションを見いだすべく、スマートシティ部門を設立した。同社は数年前にはスマートホーム部門も立ち上げている。AT&Tはその幅広いセルラーネットワーク上に、さまざまなローカルネットワーク(その多くはWi-Fiネットワーク)を統合する機会を見いだしている。
AT&TのIoTグループでバイスプレジデントを務めるChris Penrose氏は、「これまでのIoTは、多数のポイントソリューションで構成されるものだったが、これからは、さまざまな所で収集されたデータを共有し、融合する方向へと進んでいくようになる」と述べている。
ケーブルテレビや情報通信事業などを手掛けるComcast(コムキャスト)にとって、Wi-Fiはスマートホーム分野で同社の事業を拡大するための戦略の1つでもある。同社の通信、データおよびモビリティ部門でシニアバイスプレジデントを務めるEric Schaefer氏は、将来のWi-Fiの活用法を示した映像を披露した。映像には、住宅用Wi-Fiシステムが音声電話やビデオ通話の完了をサポートする様子など、Wi-Fiのさまざまな利用シーンが映し出されていた。Schaefer氏によると、Comcastは同社のWi-Fiサービスをバックエンドネットワークに統合し、消費者にネットの安全性を保証することにしているという。
GE(General Electric)は、現在米国カリフォルニア州サンディエゴとフロリダ州ジャクソンビルで試験中のLEDベースのスマート照明プロジェクトを足掛かりに、こうした動きに加わろうとしている。
IoT向け端末に関する標準化団体OIC(Open Interconnect Consortium)でエグゼクティブディレクタを務めるMichael Richmond氏は、「数年後にはプロトコルが整理され、IoT機器を開発しやすくなるだろう」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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