アンライセンス周波数帯でのLTE活用(LTE-U)を推進するメンバーと、Wi-Fi Allianceの溝が深くなりつつある。Wi-Fi AllianceはFCC(米国連邦通信委員会)に対し、LTE-U対応機器の認証を控えるよう求める一方で、LTE-U推進メンバーは、それに反論する書簡を送っている。
アンライセンス周波数帯でLTEを活用するLTE-Uを推進するメンバーと、Wi-Fi Allianceは以前から対立してきたが、今回、米国の規制機関への文書のやり取りを通じて、両者間の溝はさらに深まることとなった。
Wi-Fi Allianceは2015年8月初め、米国連邦通信委員会(FCC)に、ある要求書を提出した。それは、「アンライセンス周波数帯を公平に共有できるということをWi-Fi Allianceが確認できるまでは、LTE-U対応の機器の認証を控えてほしい」というものだった。Wi-Fi Alliance側は、同団体独自のガイドラインを用いて、公平かどうかを確認したいとしているが、このガイドラインは現在作成中だという。Wi-Fi Allianceは、同ガイドラインによってメーカーのデバイスを独自に試験できるよう目指している。
LTE-Uでは、LTE-Advancedを、アンライセンス周波数帯である5GHz帯まで拡張することを目指している。そうなると、ユーザーはWi-Fiネットワークにログインしなくても、携帯ネットワークで高速通信を行える。そのため、Wi-Fiに頼る企業からは干渉や規制などで懸念の声が上がっている。
Wi-Fi Allianceは、「アンライセンス周波数帯における公平な共存を確認する前に、LTE-U対応機器を認可してしまうと、10億台を超えるWi-Fi機器や、アンライセンス周波数帯で使われているその他の機器が、リスクにさらされる可能性がある」と主張している。
Wi-Fi Alliance側は、LTE-Uに関する追加情報を強く求めている。LTE-U/LAAが、Wi-Fiを介して提供されるサービスの質を低下させるのではないかという懸念の声も聞かれる。
Forward Conceptsの主席アナリストであるWill Strauss氏は、「Wi-Fi Allianceが、『LTE-Uは、Wi-Fiにとっては利益をもたらす存在ではない』と信じ込んでいるのは明らかだ」と述べている。
一方、Verizon Wireless、Qualcomm、T-Mobile、Alcatel-Lucent、Ericssonは2015年8月27日(米国時間)、Wi-Fi Allianceの要求に反論する文書をFCCに送った。「Wi-Fi Allianceの要求は、一般ユーザーや業界、さらにFCCなど広範にわたり、マイナスの影響を与える」として、Wi-Fi Allianceからの要求を却下するよう訴えている。
また、Wi-Fi AllianceがLTE-Uとの共存について懸念していることに対しては理解しつつも、さらなる検証結果が必要であるという意見には難色を示した。
QualcommでCTO(最高技術責任者)を務めるMatt Grob氏は以前、EE Timesに「Wi-Fiは、既に多くの通信事業者に採用されている。ただ、われわれ(LTE-Uを推進するメンバー)は、アンライセンス周波数帯を、IEEE 802.11準拠の技術に比べて、3倍ほど効率よく使えるという自信を持っている」と述べている。
アンライセンス周波数帯を利用するLTEには、LAAの他、3GPPによるLTE-WLAN Radio Level Integration and Interworking Enhancement(LWA)、Qualcommが提唱する「MuLTEfire」など複数の技術がある。このためFCCは、アンライセンス周波数帯でのLTEとWi-Fiの共存は複雑になるとみているようだ。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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