今回は、EtherCATにおける4つの通信方式を解説したいと思います。EtherCATには、マスタ(ご主人様)が、スレーブ(メイドたち)の“身上調査”を行うための「SDO通信」用に3種類、“仕事内容”を送信するための「PDO通信用」に1種類の通信方式があります。膨大な量のフレームが飛び交うEtherCAT通信の世界を、さっそくのぞいてみましょう。
FA(ファクトリオートメーション)を支える「EtherCAT」。この超高度なネットワークを、無謀にも個人の“ホームセキュリティシステム”向けに応用するプロジェクトに挑みます……!! ⇒「江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る」 連載一覧
「エンジニアの方でメディアに登場する方って、ほとんどいないのですよ」。
以前、新連載の打合せの時に担当のMさんがおっしゃっていました。
「比べて、IT系の人は、あっちこっちで講演やらインタビューやらで、メディア露出が激しいですけど……」。
確かにIT系ベンチャーの若い社長って、あっちこっちで自分のビジョンをしゃべりまくっていますよね。まあ、栄枯盛衰の激しいITの世界においては、あれも大切な仕事の1つなのでしょう。
「だから、江端さんみたいな(サラリーマンで、週末エンジニアで、自分のホームページに文章を書いて、公開している)方って、少ないのですよ」。
うん、私もそう思う。私以外で、私みたいなことやっている人を、私は知らないです。
実際のところ、(私を除けば)エンジニアは控え目で謙虚です。
そして、エンジニアは、自分のエンジニアとしての価値を過少評価する傾向があるように思えます。
私の回りにいる人間は、(あの無礼な後輩も含めて)世界のどこに出しても恥ずかしくないエンジニアばかりですし、その中には私が「天才」と認定した者もいます。ところが、その手の「天才」は往々にして、価値基準が世の中から離れていることが多いのです。
例えば、『特許出願、論文投稿、海外での学会発表などへの興味が全くない』などです。私が色々アドバイスしても『えー、面倒くさいです。江端さんの発明ってことにして、論文とか特許出願してもらっていいですよ』と、平気で言ってしまうのです。
―― いや、それ、できないし(特許法第29条違反)。
仕方がないので、主任であるこの私が、彼の特許明細書のゴーストライター……もとい、テクニカルライターとなって、彼を発明者とする特許出願をしたりしていました。
この連載のきっかけとなった、SOEM(Simple Open EtherCAT Master)の開発者の方を探すために、私は、欧州と米国にメールをバラマキました。あちらのエンジニアは移籍が頻繁で、追いかけるのが大変なのです。
ようやくたどり着いたSOEMの開発者に、「あなたの開発したコードは素晴らしい! SOEMを使った内容で連載したいけどいいかな? できれば、開発者としてのコメント(読者への挨拶文)をもらえると嬉しいんだけどな!!」という、(熱い内容の)メールを送付したのですが、なんというか
―― 反応が薄い
「好きにやって下さって結構です」という感じの短いメールを一通頂きましたが、その内容はとてもタンパクで、結局、この連載へのコメントは頂けませんでした。
「似ているなぁ」と思いました。
彼らは、自分自身を売り込もうとしない。メディアなどで自分の成果を語ろうとはしない。「自分が作りたいものを作っていること自体が、すでに『ご褒美』」と思っているかのようです。
もっとも、私は、そういうエンジニアが好きです。
少なくとも、「意識高い系」の発言を繰り返すITベンチャー企業の社長 ―― 時々『下品だなぁ』と眉を潜めてしまう ―― とは、全く逆さの方向で、こういうエンジニアたちのことを、私は心から大切にしたいと思うのです。
私は、そういう「天才」にはなり得なかったわけですが、そういう「天才」を理解する能力には恵まれたようです。
―― 映画「アマデウス」のサリエリか!
と、寂しく「一人ツッコミ」している、秋の夜です。
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