東北大学の磯部寛之教授らによる共同研究グループは、有機ELデバイスをより簡単に製造できる分子材料を開発した。この材料を「さっとひと吹き」するだけで、発光効率が高い照明用の有機ELデバイスを作成することが可能となる。
東北大学の磯部寛之教授らによる共同研究グループは2015年11月、有機ELデバイスをより簡単に製造できる分子材料を開発したことを発表した。開発した材料を「さっとひと吹き」するだけで、発光効率が高い照明用の有機ELデバイスを作成することが可能となる。
磯部氏らの共同研究グループは、「ベンゼン」周辺にメチル(CH3)基をもった「トルエン」を用いた。これを分子設計、化学変換によって5つ連ねた環状分子とすることで、有機ELを単純かつ短かい工程で製造することができる新しい電子材料を開発した。この電子材料分子には炭素と水素の元素のみが用いられている。
新たに開発した材料を用いて有機ELデバイスを試作したところ、もっとも単純な単一層のデバイス構造でありながら、発光効率がほぼ理論値限界となることが分かった。発光層には6%と微量のリン光発光材を混ぜ込んだ。
現在の有機ELデバイスは、量子効率100%のリン光発光材料を用い、性質の異なる複数の有機物質を薄膜化して積層する多層構造とすることで高い発光効率を達成してきた。今回の材料開発で、こうしたデバイス構造や材料設計が大きく変わる可能性を示した。
研究グループでは、新たに開発した炭化水素材料が光の三原色(赤色、緑色、青色)すべてのリン光発光材料に適用できることも実証しており、今回は白色発光の有機ELを試作することに成功した。
今回の研究成果は、英国王立化学会のケミカル・サイエンス誌に暫定版が掲載され、正式版も近く公開される予定である。
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