理化学研究所(理研)は、「nano tech 2016 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」で、有機半導体コロイドインクと静電スプレー成膜(ESC:Electrospray Coating)法を用いて試作した、ドーム型太陽電池用パネルやEL素子を初めてデモ展示した。
理化学研究所(理研)は、「nano tech 2016 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2016年1月27〜29日、東京ビッグサイト)において、有機半導体コロイドインクと静電スプレー成膜(ESC:Electrospray Coating)法を用いて試作した、ドーム型太陽電池用パネルやEL素子をデモ展示した。
開発した技術は、理研と埼玉大学が中心となり、民間企業5社と共同で2012年1月に設立した「新世代塗布型電子デバイス技術研究組合(ECOW)」が取り組んでいる研究テーマである。開発グループでは、有機溶剤を含まない水性有機半導体コロイドインクを始め、三次元曲面への成膜が可能で、製造コストも低減することができるESC方式の印刷技術、及びデバイス評価や解析、シミュレーション技術などの開発を行っている。
展示ブースでは、これらの技術を用いて試作した太陽電池用パネルやEL素子を、今回初めてデモ展示した。太陽電池用パネルは、直径が7.5〜8mmのドーム型ガラス基板などに成膜している、いくつかの加工工程などを紹介した。
「開発した技術を用いると、自動車のボディ形状に合わせた太陽電池用パネルや、インパネ向けに自由曲面の有機EL素子を作り込むことができる。しかも、水性有機半導体コロイドインクを用いるとRGBが均等にそろうため、ELを白色に発光させるのに適している」(説明員)と話す。従来のスピンコート法などに比べて有機溶媒の使用量も大幅に削減することができるという。
ESC塗布方式は、塗液に5000Vの高い電圧を印加すると、電位差によって陽極のノイズから水性有機半導体コロイドインクが放出され、マスキングした対象物の基板(陰極)に、必要な部分だけ塗布される仕組みである。
ECOWでは今後、成膜の多層化やさまざまな形状の基板に対応するための技術開発も進める。現行ではノズルから噴霧される粒子が直径50nm程度であり、膜厚が100nm以下の場合、粒子1個しか堆積させることができなかった。このため、「将来は粒子の直径を10nm程度にすることで、積層を可能にしていきたい」(説明員)と語る。さらに、限られたノズルの噴霧角に対して、多数個用いるなどノズルの位置を最適化することで、3次元曲面の塗布基板などでも、成膜品質と作業効率を高める工夫を行っていく計画である。
なお、ECOWには、黒金化成、FLOX、T&K TOKA、東レエンジニアリング及びコアコンセプトテクノロジーの5社が、組合員として参加している。
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