では次に、最近、いろいろ話題となっている「糖質制限ダイエット」についても考えてみたいと思います。
このダイエットについての私なりの理解をひと言でまとめると、「ガソリンを入れないで走らせ続ける自動車」です。
人間が、動くためのエネルギーを得る最もてっとり早い手段は、糖質(炭水化物)を食べることです。糖質は、ガソリンのように簡単に引火して、エネルギーに変換されるからです。
糖質制限ダイエットとは、このお手軽なガソリンの補給を断ってしまうことです。そうすれば、ガソリン以外のものをエネルギーに変換しなければならなくなります。
脂質やタンパク質は、糖質のようにダイレクトな燃料として使うには、少々不便な性質を持っていますので、現在蓄えているぜい肉が、燃料に回されやすくなる、というものです。糖質制限ダイエットは、「痩せる」という目的に関しては、理にかなった方法といえるでしょう。
しかし、本来、ガソリンとして使われているエネルギーが突然止められる訳ですので、頭痛や脳の機能低下が発生しやすくなりますし(「ダイエットで脳が壊れる? 危険な“負の連鎖”」)、本来、各種の潤滑油としての役割も果たす脂質や、体の構成要素であるタンパク質までもが、エネルギー源として使われてしまうことになるので、文字通り、「身体を切り崩す」ダイエットとなります。
ただ、ダイエットというのは、基本的にはそういうものです。
「健康なダイエット」というのは、「白い黒」というくらい、矛盾したフレーズなのです(後述します)。
「低インスリンダイエット」「糖質制限ダイエット」などの新しいダイエット手法に対して、私はダイエットの古典的手法である「カロリー制限ダイエット」をベースとして考えていますが、実際のところ、この「カロリー」自体も怪しいのです。
なぜなら、「食物カロリーの数値」が、あまりアテにならないからです。
食物カロリーというのは、「その食物自身が持っているカロリー(熱量)」にすぎず、それが「自分の体の中で消費されるカロリー」とイコールにはならないのです。
例えば、セロリのように食物繊維の多い食べ物は、消化吸収に大きなエネルギーが必要なので、実質的なカロリーはごくわずかになります。
しかし、人には個体差があって、強い胃液や腸液を持っていて、食物繊維をやすやすとぶっ壊すことができる人は、セロリであってもたくさんのエネルギーを取得することができる訳です。
つまり、レストランで食事に表示されているカロリーは、一種の目安であって、実際に体内に摂取されるカロリーは、その人の個体差はもちろん、体調や気分、時間帯によっても変わるということです。
ここまでをまとめますと、「低インスリンダイエット」だろうが「糖質制限ダイエット」だろうが、はたまた「カロリー制限ダイエット」だろうが、つまるところ、それらのダイエットの効果を比較する方法は、ないということです。
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